オープニング 皆勤賞授与式
2010年の締めくくりは電塾本体としては初めての試みの合宿形式の全国大会でした。場所は多摩永山情報教育センターで多摩ニュータウンの近くになります。
とてもすがすがしい秋晴れの好天に恵まれ、早めに集まった玉内さんと私は周りの風景を撮影しにお散歩にでかけました。
会の最初に電塾塾長の早川氏から皆勤賞の授与式がありましたが、 その後長年レンタルフォトスタジオを牽引、そのデジタル化に大きく貢献してきた電塾事務局の金田氏に感謝状が贈られました。金田氏は今年晴れてお仕事を引 退されたそうです。本当にご苦労さまでした!。早川氏が玉内様に贈った言葉は「これを機会により電塾事務局長として精進するように…」でした。これからも よろしくお願いいたします。
セミナー1.2「高精細画像記録の実際---撮影編」 講師:早川廣行/阿部充夫/米澤 宏
早川氏のアジャンター石窟内の撮影の実際はお伺いするのは3度目 にもなるのですが、内容はかなりバージョンアップされていました。撮影用の機材の改良もさることながら、レーザー水準器を使った撮影位置、カメラの水平、 垂直だし被写体の分割など、素晴らしいテクニックを披露していただきました。会場内はレーザーが飛び交い、さながらコンサート会場…いや、建築現場のよう です。なお、今回は早川氏だけでなく、阿部、米沢を加えた石窟トリオの報告となりました。?
カメラバック部を改造し、より安定させる方向に向いていました。
これまでコンピュータとカメラを搭載した三脚は独立していましたが、今回はドーリーに乗せて一体化させ、多くの補強がなされていました。単一の目的のために装備を搭載し続けた結果でしょう。ちょっと無骨な「アイアンマン」を思わせる。なかなかの「見物」だったと思います。
天井を撮影するために追加された補強装置
工夫された機材の数々。
カメラの水平、垂直だけでなく、あおり板の水平、垂直、撮影箇所 の割り振りを決定するマス目割、さらには重要な撮影ポイントの決定までを数台のレーザー測量機を使ってコントロールしている様子には皆驚いていました。あ る程度はお話しをお伺いして知っていたのですが、まさかここまでとは…。私は「開いた口がふさがらない」状態になってしまいました。
レーザーを使用した精密設置の風景
レーザーには距離を測定するもの、直角を出すもの、垂直と水平を 出すもの、本体内に電子ジンバル機構(初めて聞く名前でした…自動整準機のことで勝手に水平をとってくれる機能のことでした)を内蔵して本体が多少曲がっ ていてもきちんと水平になるものなど、様々なものが用意されていました。確かにこれらがあれば分割撮影の精度を驚異的に上げることができそうです。
タイリング撮影の重なり具合の決定方法
また、事例照会中には阿部さんからレーザー水準器を使用して角度 を付けた複写の際に被写体に正対させる方法論も紹介されていました。通常の気泡を使用した水準器では十分ではないので鏡を使って正面を探る技術がありまし たが、その代わりにレーザー水準器を使用して、より精度を出しているそうです。
もっともアジャンターの撮影にはホテルから現場まで、これらの機 材をを毎日運び込む必要があると言うので、きっと大変な思いをされていたのでしょう。初めてこの撮影に関する講演をされたときから比較して撮影に関わる技 術は大幅に進歩していており、特に精度を上げるために驚くほどの知力と体力が投入されていたことに感慨深い物があります。撮影は確かに大変ですが、その後 のタイリング作業も驚くほど時間と労力を必要としているそうです。タイリングにはAdobe Photoshop CS5 Extendedを使用しているそうです。特にマッキントッシュ版は時間はかかる物のその精度の高さは群を抜いていると言うことでした。
Photoshopによる合成にも「手順」があり、いきなりパノラマに仕上げることはしないそうです。確かにそれではむちゃくちゃ時間がかかってしまいますし、途中で手をいれることができません。その手順とは…。
1.ファイルをレイヤーとして読み込み。Photoshopのレイヤー合成の機能は驚くべきレベルに達しています。この機能を使うためにまずつなぎ合わせる画像をすべてレイヤーとして読み込みます。
2.レイヤーの自動整列を使ってパノラマに仕上げるが、その際に 「自動設定」はもちろん、[遠近法]や[球面方]などは採用しないで、[位置の変更]のみを使用します。これはカメラを振って撮影した場合はかなりの長玉 以外使えない機能ですが、4×5カメラのバックに取り付け、レンズの位置を固定しまま焦点面だけでライズ・フォール、シフトの機能を使って分割撮影した場 合は下手に変形をかけない方が遙かに綺麗につなげることができるのだそうです。私はこれまでコラージュを多く採用してきましたが、なるほど、と感じまし た。(コラージュは位置を変更し、画像の回転も付け加えます。長焦点レンズを使用して手持ちで撮影した場合には有効です)
3.さらにすべての描画モードを「[差の絶対値]で確認。整合性 がない場合はラインや形が見えるので、位置を微調整し重なり合っている部分が真っ黒になるまで合わせ込みます。それでも上手く繋がらない場合はレイヤーの 上下を入れ替えることでさらに精度アップが可能だと言うことでした。この作業をするときも相当のマシンパワーを要求しますね。12億万画素程度のデータ量 をハンドリングしているそうです。
4.ここで調整レイヤーのまま保存します。さらに Photoshopを再起動させ、ここまでのキャッシュをすべてクリアーにします。これもPhotoshopを落とさずに使用するための知恵ですね。ま た、この後の行程ではトーンや形も微妙に変形されてしまうので、いったん戻れるここまでのデータを保存しておくと言う意味があるそうです。
5.レイヤーを自動合成。“ぼけ”足をつかってマスク合成すると つなぎ目がぶれて見える。ひどい場合は整合性のない部分が見えてしまう。そのためにPhotoshopにハードエッジマスクを生成させるのだそうです。そ の際にはレイヤー間のトーンの不整合も調整されます。その後25%で全体を確認。その後レイヤーを統合して100%で確認。
6.さらに形を合わせ込むためにパペットワープを活用して微調整を加えて、完成となるそうです。
ZoomifyでWEB用データを作成し、この巨大な画像をPhotoshopを持っていない方々でも共有できる仕組みを最後に紹介して、締めくくりでした。質問も活発にでる
会場に並んだ「秘密兵器」を撮影する人々
会場にはこの方法論で仕上げられた90×150cmほどの大判プリントが数枚展示去れ、この大がかりな撮影の成果が見事に再現されていました。
セミナー3「分光画像記録の実際---撮影編」
講師: 土田 勝/秋葉宣容と「チームAKB」の皆さん
土田氏の分光記録も東北電塾の秋葉氏たちの協力でさらに現実味を帯びてきました。特にニコンさんが素晴らしいフィルターを作り上げたというお話し、興味をそそられます。
当初は土田様からマルチバンド撮影の意味の解説です。もう皆さん ご存じかもしれませんが、光をRGBの三原色でとらえるのではなく、もっと細かい波長ごとにとらえようという物です。スペクトルごとに光をとらえることが できればこれまでのおおざっぱな光の記録法から初めて脱却できる可能性が見えてくるはずです。
そのメリットは4つ存在します。
第一に正確な色彩。RGBによる3バンド撮影における色差は 3.21ですが、6バンド撮影では色差は1.29まで押さえ込むことができるそうです。もちろん、色によって色差は変わってきますが、平均で約1/3とい うのは凄いですね。通常2.5以内であれば十分と言われていますが色差2を切ったらほとんど見分けが付かないと思われます。
第二に広い色域が挙げられます。6バンドではAdobeRGBよ りも広い色域をリアルにとらえられる。(通常のデジタルカメラが記録するAdobeRGB領域は演算で得られています)もちろんその色域を再現できるデバ イスは現在ほとんどありませんが、記録されていればその活用法は未来に多く開拓されるでしょう。
第三にスペクトル情報を記録できる。これは理解しにくいかも知れ ません。通常、色彩はそれを照らす光源に依存します。それを私たちは目を通じて、記憶色や期待色と言ったフィルターを通じて「見て」います。それを元々の 色彩がもつスペクトル反射率として演算でき、これは素材の特定、退色した場合のオリジナル色彩の特定などに役立ちます。
第四に撮影時とは異なる光源で見たときの発色をシミュレーションできることがあります。「太陽光下」と「電球下」、あるいは「蛍光灯の下で見た場合」と言ったシミュレーションが可能になるのです。
できればリアルに多バンド(8バンドあればかなりの情報を、12 バンドあればほとんど完璧でしょう)で撮影したいところですが、現在実現可能な方法としてRGB分解をするカメラを使用、それにいくつかの周波数をカット するフィルターを付けて差分データを得、6バンドで記録する方式を編み出しました。これは撮影回数がたったの二回で済むので、実用的と言えます。
ただ、フィルターを入れ替えたときのショックによる位置ずれがこれまであったのですが、それをソフト的に補正する機能を追加。とても精度が上がったと言うことでした。
市販のカメラで6バンド撮影するための秘密兵器「多バンド分解フィルター」
その後は東北電塾の秋葉氏を中心とする「チームAKB」のメンバーによる撮影実験です。私も最近注目しているハッセルブラッドH4DII50MSを使用して分光記録に挑みます。
この手の実演に必ずつきものなのが、「テストでは動いていたのに」「普段はまともに動いているのに」いきなり動作しなくなる現象…を乗り越えて、デモンストレーション成功!。
最後は赤外線のみに依る撮影も敢行し、偽札チェックの仕掛けの一部に触れ、出席者からは感嘆の声が上がっていました。
セミナー5「高精細画像データを出力する」講師:鹿野 宏
いつもの事ながら、自分で自分のレポートを書くのはなんだかヘンな気分ですが…実に10年振りでマルチショットタイプのデジタルカメラを触ったあたしの感想と「フレスコ・ジークレ」という用紙を使ったプリントの発表です。
ワンショットの画像を見慣れ、バックタイプのデジタルカメラも 35mmタイプのデジタルカメラも大きな差を感じなくなっていた(実は最新のデジタルカメラNikon D7000とeVolution 75 Hのワンショット画像を比較してD7000の方が1pixel単位では遙かに優れている、と言うことに気がついてしまったのです…後は画素数だけの差でし た)あたしには衝撃でした。これだけ綺麗な画像を取得できることが…。5000万個のそれぞれの画素が、演算抜きで実際に存在しているのです。
マルチショットカメラは4-5回に分けてデータを拾得します。 (H4DII50MSは最初にワンショットを撮影し、その後の重ね合わせの際の参照データを作り、eVolution 75 Hは一気に4回撮影します)普通にワンショットでも撮影できるように、RGBGというベイヤー配列を持ったイメージセンサをいピクセルずつ4回移動させ、 すべてのpixelでR・Bは一回ずつ。Gチャンネルは二回の露光でモノクロ情報の精度を上げます。ですので、「補間補正」という演算が不要ですべての チャンネルにリアルなデータが記録されるわけです。こうして生成されたデータには「曖昧さ」がみじんもなく、スクラッチフィルターも存在しないおかげで高 周波成分もそのまま記録され、「モアレ」もほとんど無く色彩も現実に忠実に(風景や人物ではある程度調整しなくてはなりませんが、医学的、あるいは科学的 な「正しい色彩」の記録が可能です)再現してくれます。
ワンショットデジタルカメラでタイリング撮影を行い H4DII50MSよりも一回り大きめのデータを拾得し、H4DII50MSでマルチショットを使用したデータと比較しました。ワンショットとしては H4DII50MSよりも優れている画像ですが、マルチショットと比較すると、一目瞭然の結果となりました。言い方を変えると記録されたデータに「ぶれ」 や「曖昧さ」がないため拡大時にその差は大きく発生します。
そして来年発売予定のフレスコ・ジークレを使ったプリントは大好評でした。さすがに皆さん写真を多く見ているだけのことがあります。
このインクジェットプリンタ用の新しいメディアには素晴らしい特 性が3つあり、すべては消石灰であることに起因します。水分を含んだ消石灰はプリンタからのインクの着弾を受けてそれを内部に取り込みます。空気中の二酸 化炭素と結合した消石灰は炭酸カルシウムに変化し、H20をはき出し、少々太って固形化し、ちょうど卵の殻に似た、多孔質の層を形成します。そのときに内 部に入り込んだインキを完全に閉じ込めてしまうのです。
1.色彩がほとんど退色しない。今まで現存するほとんどのメディ ア、銀塩写真や印刷、油絵なども含めて200年の紫外線、熱、湿度の加速度試験を行うとほとんどの場合黄色がほとんど抜けてしまい、赤はマゼンタに、グ リーンは薄いブルーになってしまいます。しかしこのメディアは全体にやや退色する物の、発色バランスにほとんど変化が見られません。常に照明されているパ ネルなどに使うと非常に経済的ですし、アーカイブ特性も高いですね。
2.通常のインクジェットプリンタの出力はすべて平面の上にイン キが乗っている状態だが、フレスコ・ジークレの場合は着弾したインクが立体的に配置され、お互いに接触しないで重なることができるので、はた目にはインク ジェットプリントとは見えない。どちらかというと絵画表現に近いのがその特性だと言える。
3.炭酸カルシウムの「純粋な白」と立体的な地肌。このマチエー ルが素晴らしい。白は炭酸カルシウムのみで形成された白で、石膏像や卵の殻を思い浮かべていただければ、それでわかるはず。表面は細かい…人肌によく似た テクスチャーがプレーンな色面にかすかにトーンを与えます。このテクスチャーが仕上がりに独特のマチエールを与え、さらに魅力のある仕上がりになっていま す。
フレスコ・ジークレの詳細はこちら
http://www.tokuyama.co.jp/news/release/pdf/
セミナー6「文化財記録における高精細 画像記録の現状」
講師:玉内公一
今回お話をしていただいてのは、文化庁のテクニカルアドバイザー、ライティングの専門家、また電塾の運営委員でもある玉内公一さんです。
玉内さんは、国の重要文化財である高松塚古墳の壁画のフォトマップ資料の作成についてお話してくださいました。
このような国の貴重な文化財を記録する活動は、奈良文化財研究 所、東京文化財研究所、東京国立博物館、京都国立博物館、また宮内庁が管理する正倉院などが行っているそうで、玉内さんは、そこに所属する写真技師からな る「文化財写真研究会」のテクニカルアドバイザーを20年間務めていらっしゃるそうです。
高松塚古墳は、奈良県高松市明日香村にある国の重要文化財であ り、中の壁画は国宝に指定されています。しかしこの壁画が、雨水の浸水やカビの影響などで、年々劣化していることが問題視されていました。過去の写真と比 較すると、ボロボロになってしまっていることがよく分かります。
そこで、高松塚古墳の現在の状態を、早急にデジタルデータとして 記録しなければならないということで、奈良文化財研究所で始まったのがこのプロジェクトです。プロジェクトの内容は、まず三次元レーザー測定器を用いて石 室内の位置決めをし、レーザーのデータを作成、立体図に図化。その図に基づいて、約千枚の分割撮影した写真を貼り付けて、マッピング。それを動画に起こし たということです。カメラは、CONTAX 645。バックはハッセルブラッド「H3DII-39MS」を使用。照明は壁面に照射しても影響の少ないLEDを使用したそうです。
石室内への出入りは過去に盗賊が入った跡の「盗掘口」から。狭い 石室内での作業は、宇宙服並の作業服を着て、絶対に壁と接触しないよう、石室と同じ構造のものを他所に設置し、2ヶ月前から何度もシミュレーションしたの ち行われたそうです。レベル合わせにはコンタックス製のものを使用。貴重な文化財に影響が無いよう、慎重に進められた大変なプロジェクトだということが分 かります。フォトマップを作成した後は、壁画のカビの進行があまりに激しかったので、石を切り出して別所にて撮影したそうです。
こうしたご説明をうけたあとで、完成した動画をお見せしていただきました。動画では、古墳内の壁画の劣化がよく分かり、貴重な文化財が失われていきつつある現状に、会場からどよめきの声が上がる場面もありました。
と はいえ、このような文化財の保護には多額の予算と労力が必要とします。今回作成したような3Dフォトマップは、なかなか一人のカメラマンの努力で作るのは 難しく、より資料価値の高いデータを作るためには様々な分野の専門家の参加が必要です。このため文化庁を含め様々な組織から「いかに予算を得ていくか」と いうことが問題だそうです。支援を得るには、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」や、つい先日ニュースにもなった、NASAの細菌発見などのような、エ ポックメーキングも大切である、と玉内さんはおっしゃられていました。文化財研究の成果が、歴史的に見て重要であり、また誇るべき日本文化でもあるという ことを世界同時発信し、全世界の注目を集めることができれば、予算の面も改善されるということでしょうか。
「そういった意味で、まじめに仕事をすることよりも、どうパフォーマンスするかが重要である。」というお言葉が印象的であり、文化財保護の為に、これから何が必要になってくるかが、端的に読み取ることができました。
ま た、埋蔵文化財の保護においては、日本の法律の問題もあるようです。法律では、史跡が出て来たら届け出なければならないのですが、その史跡の調査にかかる 費用は、その土地の所有者が出さなければいけないそうです。その為、届け出をしない人も多いとのこと。さらに、史跡がある土地の上に建物が建ってしまうこ とが最も恐れるべき事態であり、もし上に建造物が作られてしまったら、その文化財は二度と取り出すことができなくなってしまいます。そうなると、「撮った 写真が全て」となるので、その当時考えられる最高の機材で、確実に記録を残すということは非常に大事だということです。
玉 内さんは、高精細カメラでは無いにしろ、日常的に目で見るものを「記録」する、という写真家の本来の姿を意識することによって、それが学術的な研究素材と して使われる可能性を示唆しておられました。また、もし高精細記録が出来るようなら、博物館や美術館、資料館等に声をかけていくことによって、カメラマン としての道も広がるかもしれない、ということもおっしゃられていました。
諸処の問題を乗り越えて作られた動画はやはり圧巻で、動画の最後には会場から拍手が湧いていました。
講 義の終わりには沢山の質問もありました。第14回電塾全国大会を通して頻繁に語られていた「正しい色」とは何かということについての質問がやはり興味深 かったです。これはインターネットの普及により、ディスプレイでデジタルデータを見るようになって初めて出て来た問題だそうです。マシンリーダブルなデジ タルデータの場合には、見るモニターによって、環境光によって、また状況によって、見え方が全く違うことがあります。ネット上における「色の伝達」につい ては、現状はあまり配慮されてなく、世の中に流通している色というものに、オリジナルな色についての基準も「ほとんど無い」ということで、それに関しては 議論が必要だと感じました。
(レポート:柏崎 巴瑠香)
セミナー7「マスター的高精細画像記録---まとめ」 講師:郡司秀明
郡司氏が最後を締めくくりましたが、その前に早川氏、玉内氏、鹿 野が絶賛していたマルチショット機に対して一石を投じていました。「基礎をしっかりさせて良質のCCDにもっと濃度の高い分解位置が正しいフィルターを入 れ替えて撮影した方がよほど綺麗な「高精細」なデータを撮れるんじゃないの」と言うことでした。
私も素晴らしいフィルターが搭載されたターレットタイプのデジタ ルカメラは賛成です。それならば、フィルターなしでモノクロが撮れて、フィルターを入れるとカラーが取れる。カラーも3ショットではなく、モノクロ画像も 撮影し、階調情報はモノクロを基本とし、カラー情報は3ショットで構成する…あるいはRBGBという構成でブルーの感度を上げるのもいいかもしれません。 こうすると感度もどんどん上げることができるし、もっと高精細な画像が撮れます。さらにフィルターを変更して8バンド撮影もできちゃったりして…。技術的 には問題ないですね。ただしそれを作るのにいくらかかるのか…。
郡司氏のお仕事が印刷がメインだったころには高精細印刷にどっぷりとつかっていたそうです。高精細印刷は印刷機が良い事よりも、輪転機を設置するしっかりした基礎と良質の「しめし水」が必要なのだそうです。
現在は高精細記録よりも電子ブック、動画に重きを置いているよう ですが、それも時代の要請でしょう。間に「関係ない話」として、カラーモンキーだけが今のOSスノーレパードに対応しているとか…通販カタログが一気に WEBに移行しようとしているとか…UVインキを使用するとオンデマンド機よりも高速化するとか…このあたりも結構面白かったのですが…本題からそれてい たので割愛です。
その「関係ないお話し」にはさらに続きがあり、写植機が無くなり、出版業界もDTPになった。…写真がデジタル化して一段落付いた…はずだったのに早くも二度目の大きな変革の波がやってきた。DTPが主体では無くなると言います。
XML(汎用的ではあるが文章の構造やフォントサイズなどを指定 できる)で書かれた大本のデータはCSS(文字構造やデザイン構造の指定)/HTML5(ウェブアプリケーションのプラットフォーム、及びマルチメディア 要素が含まれており、動画や静止画、音声を直にサポートしている)を通して各デバイス上で構築される…このワークフローこそが、その大本になろうとしてい る。
そしてワンソース・マルチユースを謳っていたInDesign は、ePUBへの変換はサポートしているとは言えない。
逆にその位置はXHTML5(XMLで書かれたHTML5)か ら、InDesign 形式に書き出すだけ、つまりInDesign は最後のデバイスの一つに過ぎない…と反応していました。(これまでInDesign CS5でデータを持っていればそれをどのような形にも使用できると思っていた私にはショックです。)
そしてePUBが電子書籍のデファクトスタンダードになろうとしている(来年5月にはePUB3.0…日本語対応の規格が制定されると言うことです)いま、この大きな変化の波は写植からDTPになった時を超える大木は変革の波になるだろうと話されていました。
そして、ここからが本論です。
CTPの出現で高精細印刷が可能になった…が、日本においては必要とされる理論値よりも低い解像度で現在のDTPは構成されている。昔は日本の標準の方が海外よりも高精細だったのに、今では北米の方が高精細化しているのが現実。
高精細画像を得るためにスキャナーの回し方もいろいろと工夫されていたが、そのスキャナーも生産が中止され、富士とサイテックスに在庫があるだけと言うのが現実。5年後にはスキャナーがこの世から無くなっているだろうと言っていました。ポジはどうするんでしょうね??
高精細印刷に必要な解像度は400dpi。余裕を持って500dpiあれば、全く十分だそうです。要は印刷機に受け渡すときにどれだけ細かく作れるか、と言うことだそうです。
ただし、データベースとして保存するなら超高精細画像は絶対必要だそうです。(検索用の粗レゾも必要)そして今やスキャナーを使用するよりもデジタルカメラを使用した方がより良い色彩を記録できるようになってしまった。
高精細画像に必要なフォーマットとして
色域はAdobeRGBとは限らない。分光記録も正解の一つだ し、XYZによる記録も解の候補だと言います。そのほかにもエクステンデッドRGBとしていろいろな候補も出現している、ハリウッドが制定したDCIなど もその一つだが、決め手が無い状態。超高画素である必要はあるものの、画素数とレンズ性能に限界があるので、タイリング技術は必要だと断言していました。
時代がパブリックには超高精細記録を求めない状況下ではあるもの の、この需要は確実に存在し、むこう10年はそれが継続するだろうと予測した上で「このようなことをできる技術を持ち、その価値がわかり、それなりの機材 を持てる人間は多くはいない。それならば仕事先を上手く見つけることで“競争相手のいない仕事”を確立できるのではないか?」という意味の発言していまし た。
懇親会と記念撮影懇親会&ビンゴ大会
懇親会も大いに盛り上がり、今回は懇親会内で「いい物、こと探し」が行われました。56名の自己紹介は一人2分話すとほとんど2時間です。凄かったですね!。皆さん、何かの良い物、事を見つけていらしゃるのは「さすが」です。
今回はそれぞれのお話を取り上げませんが、大阪の福島氏が撮影してくれたポートレイトを一挙にご紹介します!。
今回のビンゴ大会は柴田氏の仕切りでした
静岡の浅場さんが最高商品のマスターコレクションをゲット!
じゃんけんで商品をゲットするシーンも
商品を提供してくださいましたアドビシステムズ様、ニコン様、銀一様、そしてLabに感謝です。
セミナー終了後、会場を慌ただしくかたずけて、食事に移動しまし た。結構なボリュームの食事でちょっと驚きました。食事後に恒例の記念撮影を全員で。今回はあたしのD7000を使用。カメラ位置が低いためわざわざ階段 に並んだ意味が無く、後ろの方の顔が見えないのはご愛敬。また、来年お会いしましょう!