「初めての恥かき動画体験記」電塾運営委員 鹿野宏
早川塾長の朝の挨拶。写真は無いので…。
今年の電塾は数回にわたって動画を取り上げてきました。その効果もあるのでしょうが、私も「必要に迫られて…」動画撮影、編集を行うことになりました。これまで「動画なんて」と思っていた人間が初めて「仕事としての動画」に立ち向かい、失敗したこと、新しく覚えたことをレポートしました。
最初に動画を撮影するにはカメラが必要です。偶然というか、当然というか、私の手持ちに二台の動画を撮影できる一眼レフがありました。ペンタックスのK-7とニコンD90です。まずはこれでテスト撮影となりました。
そして編集するには動画編集ソフトが必要です。これには大きく分けてWindows 陣営のアドビ社が提供するAdobe Premiere Pro、アップル社が提供するMac陣営のFinal Cut Proの二大勢力に分けられます。
まず、撮影に関しては、ニコンD90もペンタK-7もなかなかの出来でした。しかし、D90は音声がカメラ内蔵マイクでしか記録できません。撮影対象が「取材撮影」であったため、これは没となりました。また、両機種ともマニュアルでシャッタースピードを固定できません。高周波点灯しない通常の蛍光灯の環境下では殆どの場合フリッカーが発生し、仕事になりません。シャッタースピード歳堀値ISO、をマニュアルで設定できなければ非常に使いにくいのです(ND フィルターを使用するという手もありますが…)
また、全てオートになっているため不用意にパーンを行うと、勝手に露出を変えてしまい、映像が見苦しくなります。
条件がよい場所(明るい戸外…とか)ではさすがに綺麗な画像が記録できますが、コントラストをコントロールできないのも問題ありでした。動画で偽色が発生するとこれまた見苦しいものがあります。静止画の設定はそのまま反映するのが殆どの仕様ですが、通常よりはコントラストを低めに撮影した方が良さそうでした。
また、この2機種はどちらもAVI方式。古い規格でWindowsのデフォルトでした。そのため汎用性はあるのですが、ファイルが最大2GBまでとなっていますので、5分も撮影できません。扱う圧縮形式にプアーなものが多く(AVIはコンテナ形式なので、圧縮形式はかなり自由に選択できるようです。)撮りっぱなしの状態では我慢できても、編集後はかなりの画像劣化が起きてしまいました。
また、両機種ともフレームレートが30fpsですが、動画の世界のデフォルトは29.97fpsです。絵的には問題ありませんが、音声のタイミングがずれてしまうという問題もあります。これはクライアントさんにかなり指摘されました。
どうやら手持ちの一眼レフでは「お金をいただくムービー」を撮影できそうにもなかったので、急遽発売されたばかりのCANON EOS 7Dを購入しました。レンズはお手軽に9000円のプラスチックレンズ50mmF1.8です。シャッタースピード、絞り値、ISOの全てをマニュアルで指定できます。(こんな当然のことが出来ない方がおかしいですよね?)コントラストのコントロールもかなり効きます。音声はオート記録しかありませんのでカメラ任せですが、外部端子を使うことが可能なのでピンマイクやガンマイクを駆使できます。H.246のコーディックを採用しているおかげで記録された画像は非常に質が良く、多少編集してもへこたれません。これは非常に大きなメリットです。ただし編集するためにはフォーマットを変換しなくてはならず、その時間がかなりかかります。仕事で採用するのであれば、私は高品質を選択したいと思います。
いわゆる「普通のデジタルムービー」も考えたのですが、「手の届く値段で、仕事で使用出来る高画質」は一眼レフタイプのムービーカメラでした。
ソフトウエアーはMacを使用していることと、デファクトスタンダードがFinal Cut Proであること、Final Cut Studioが10万円に値下がりしたことなどが決め手でした。AdobeのPremiereもかなり良いソフトですが、使いかってから此方を進められた、という事もあります。
いざ撮影となると、また問題が起きてきます。元々一眼レフデジタルカメラに動画撮影機能を付けただけのものです。音声のモニターがありません。画像はモニタリングできますが、音声はだめです(今のところこのタイプのデジカメには一切ありません)。実際、撮影時に電源スイッチのあるマイクを使用していたときにスイッチの入れ忘れをやっちゃいました。音声モニタ、あるいはイージケーターが欲しいところです。
また、録画も4GBか30分mのいずれかをオーバーした時点で終了します。いろいろな思惑もあるでしょうが、今後90分まではがんばって欲しいと思います。
こんなお話しをしていましたら、すでに動画をお仕事にされている方から、「試し撮りとその確認はちゃんと毎回やろうね」というありがたいサジェスチョンをいただきました。確かに、当然守るべきお約束ですね。またそれ以外にもミキサーを使用する方法や別に録音してタイミングを取る方法など、様々なアイディア、意見を交換できたことがとても有意義でした。今回もきっと一番午前の部を楽しんだのは、私だと思います。
午後の部 第二部「恒例!良いもの・こと・探し」
今の時期に大変難しお題。良いことや良いものを探すという大変なテーマです。私も最近の日記は出来るだけ良いことを探すのですが難しいことですね。でも、こんな時代だからこそ、良いもの、ことを探すのは大事なのでしょう。ベッキーのブログを読んでそう感じたりして…。
今月の一寸期になった良いことを少々。
さるメーカーの方がフラッシュバルブにはまってるということ。つい最近まで22Bが数箱残っていたんですが…。残念なことに処分してしまいました。でも彼はインターネットで、けっこうかき集めているようです。
冬
になって、嬉しいことをお二人の方が上げておられました。お一人は大好きな富士山を見る機会が増えたという事。日が昇るのが遅くなって、出社時に茜色の空
を堪能できるようになったと言うこと。どちらもつましいですが、やはり良いことですね。新たにWindows機を購入。早川氏のお薦めに沿って組み立てた
という事ですが、そのマシンが来る日が楽しみだという方もいらっしゃいました。
最後に、iPhoneネタ。最近の天気は変わりやすい。しかも雨が
続く。箱根で車の撮影をしていたが、濃霧と雨でどうにもならない。スタッフで
iPhoneを使ってスポット天気予報を検索。更に定点カメラを使って現状把握、おなじ箱根でも、きっちり晴れている場所を探し当て、無事に撮影完了した
という、アクロバティック且つインターネット時代の恩恵のお話しでした。お見事!
第三部 「コシナの技術」株式会社コシナ 営業開発本部 営業グループ 本部長付き 大塚 忠雄様、同、営業グループ 中澤雅紀様
「コシナ」という名前のメーカーは昔から知ってはいました。単にサードパーティの交換レンズメーカーと思っていたのですが、お話しをお伺いして一寸 びっくりです。OEM供給しているレンズの数もさることながら、フォクトレンダーの生産、ツァイスレンズの生産も行っている会社でした。そういえばエプソ ン RD-1はコシナさんとの共同制作…。すっかり忘れていました。
今回は「出前工場見学」という事でガラスの生産から製品の仕上げまで一貫して行っているコシナさんの「物作りの姿勢」をお話しいただきました。長野県の北という土地に根ざして、文字通り地に足を付けたお仕事の姿勢には好感が持てます。
「中央の白い粉」がガラスの材料。もう少し固まったザラメ状の物もある。左側のガラスの固まりがレンズになる物。一からレンズを作り上げる会社はこの規模では珍しのだそうだ。私たちにはあまり伺いしれないことではあるけど。
仕
上がりまでの製品管理を含めて、カール・ツァイスのレンズを生産できる工場は世界を見渡してもそうは多くないでしょう。私は残念ならがクラッシックカメラ
に対する愛着が殆ど無いので、レンジファインダーカメラとその手のレンズはいくら良いものでもあまり興味はありませんでしたが、SLR現行用のツァイスレ
ンズ群には興味津々です。実際に7D持ち込んだに装着してみると驚くほど滑らかな“ぼけ”味にまず感動。キヤノンレンズ、家、国産レンズにはない見事な
「柔らかさ」です。次にピントリングの動きが滑らかで、ほぼ全集分のトルクがあることにうれしさを感じてしまいました。まるでムービーを撮るために作られ
たようなレンズです。イオス系にはきっと似合うでしょう。周辺の品質も非常に高く、撮影していて、非常に楽しいレンズだと感じました。全体に金属で作られ
ていてどっしりとした感じ、ピントリングのスムースな動き、細部にわたって、「良いレンズだ」と思わせます。7Dに装着するとボディの方が見劣りします。
9枚バネの絞りも綺麗です。う〜〜ん。欲しい!単レンズならあたしは40mmが欲しい!。APS-Cサイズでは60mmになり、殆ど万能レンズといえるの
だもの。コシナさんはそんなレンズは作ってくれないのかしら??と思っていたらば、発表されていましたお値段は60,000円。安いとは思わないけど、こ
の仕上がりでは高いともいえない微妙な価格帯ですね。
これは参加者全員に配られたお土産。ツァイスにライカのピンバッチ。玉内さんが娘さんに付けたっかたという名前ですね。
後半に金田氏が飛び入りをしてPLマウントのカール・ツァイスレンズ「コンパクト・プライム」を持ち込んできました。前日に公表可能となったばかり の物で、持ち込まれたのは21mm、50mm、85mmですが、かなりのラインナップを予定しているようです。全て前玉の径と全長が統一され、絞りバネは 12 枚。殆ど真円に見えます。PLマウントはムービー用のマウントとして有名な物だそうで、CANON EOS 7Dや5Dにはアダプターを介して装着します。いわゆる「カール・ツァイス製のムービー専用レンズ…はっきりと入ってはいないけれども一眼レフムービー 用」だという感じでした。
フル装備のCANON EOS 5D Mark II。ピントをスムースに送るギアが何ともいかめしい。
コンパクト・プライムの全容。ピント送りのためのギアーが「いかにも」。
左が85mm、右が21mm。後ろにぼけているのが同じレンズ構成の一眼レフ用のレンズ。本来の大きさに比較してかなり大きいのはレンズ系や全長を統一するためだろう。
これがPLマウントアダプター。外側からロックをかけるのでかなり頑丈。ニコンマウントは径が小さすぎてアダプターを作れないそうだ。
質問のコーナーではかなり突っ込んだ…あるいは普通は聞いてはいけない質問がありましたが、これは電塾の規約「電塾内で見聞きしたことで、良識に触 れる物は外に公開しない」という原則に基づいて割愛させていただきます。でも、曲線の見方について、マンツーマンで解説している風景も…。
第四部 「調光精細画像記録の世界」 電塾塾長 早川廣行
昨今一眼レフタイプデジタルカメラは2400万画素という高画素時代に突入しましたが、早川廣行氏は昔から超高画素デジタル画像を提唱していまし た。普段使いのカメラではなく、文化財などを記録保存し、その記録画像を使用してあたかも現物を目の当たりにしているような研究を行えるようにしたいとい う…とんでもない願いを叶えるには約4000万画素のカメラバックで8面タイリング撮影を行い、約2億6千万画素(長辺でなんと19.110ピクセル)と いうとんでもない量のデータです。
氏が常々言っていることに「ワンショット画像は嘘の画像だ」という言葉があります。確かに実データは1/2以下しか無く、半分以上は演算によって得 られた画像です。マルチショットやスキャナータイプの画像に比較すると、色分離、形の分離に今ひとつ納得いかない物があるのは事実です。ただ、動いている 物を止めて撮影するには、今のところワンショットがどうしても必要。垂直分離方式のイメージセンサが本当に使い物になるにはまだまだ時間が必要なようで す。(あるいはもっと異なる方式が突然現れるかもしれませんね)それならば、ワンショットでも更に画素数を増すことで嘘の部分を縮小し、「より本物に近 い」記録が可能なのではないか、というのが早川氏の考え方だったようです。
私は通常、2400万画素あれば、普通のお仕事や趣味の写真を楽しみには必要十分だ、といってきましたが、「より本物に近い複製」を作るためにはそのような考え方も必要なのでしょう。
レポートには掲載できませんが私たちはプロジェクター越しに、その一部を拝見させていただきました。全体像から100%画像までをズーミングしてい
く課程には一同唖然としておりました。なるほど、ここまで見えれば…全体像から部分アップまで…確かに十分な研究資料となり得るでしょう。どこまで小さい
形を解像するか…埃も必要なのか…絵が描かれた紙の繊維まで解像できたら、きっと凄いことまで分かるよね…絵の具の組成まで分かっちゃったりして…。考え
ていくときりがありません。
複製を作る技術。それは写真という物がもっとも得意としていた技術ですが、銀塩時代には8×10を使用して
も、それ以上の微細な形を記録し、一枚の絵にすることは叶いませんでした。でもデジタル技術はそれらを遙かに凌駕した再現と記録を可能にしたのです。驚く
ほど緻密な複製…デジタルが銀塩を凌駕することが出来るもう一つのポジションがあることに気がつかされた瞬間です。
8
面、あるいは12面、16面のタイリングをPhotoshopを使って本当に出来るのか…。これも大きな問題です。ある程度以上大きな画素の演算となる
と、Photoshopは「演算不能」という答えを返すことがあります。私も2400万画素のデジタルカメラを使用して12面付けしたときに「むりだよ
ん」といわれて処理を分割した記憶があります。早川氏は少ないメモリーでそれでも多くのタイリングを行うためにそれぞれの動作を検証し、ついに「究極の省
メモリー演算方」を会得したようです。これも会場でふんだんに公開されておりました。ただ、氏のお話もレポート不可の部分が多く、これ以上細かくはレポー
トできません。あしからず。
今月の一枚
今月の一枚は早川塾長塾長。久しぶりの演壇登場でした。インドロケで活躍した手作りのノートブックスタンドを使用してのセミナーでした。
懇親会
今月は早川氏を交えて10人での懇親会。美味しいワインとビールをいただいて、けっこう良い気分になって眠くなってしまいました。今日は何のお話しをしたのかあまり覚えていません…。あたしとしたことが…ごめんなさい。おやすみなさい。
文: 鹿野 宏