早川廣行電塾塾長特別講演
2008年3月の勉強会は秋葉原のI-Oデータセミナールームで行われました。
いつものお台場の会場が抽選に漏れてしまったため、株式会社アイ・オー・データ機器様に場所をお借りしたのです。秋葉原の駅前、UDXという新しいビルの中にある立派な会場で、ネット環境も充実しています。おかげで勉強会の最中にネットサーフィンをしている人も、、ネット環境があることは良いことなのかどうかも、個人のモラル次第という感じですね。でも、本日の本題、「メジャーバージョンアップしたApple Apertureの検証」では、木場の別会場で勉強会を開いている廣瀬さん(電塾会友)とiChatで結んで、apertureの解説を行うという、電塾勉強会としては初の試みも、大成功に終われたのは、この快適な環境があったればこそでしょう。
さて、当日、午前は「デジタルフォト入門講座2008年版第1回」早川廣行電塾塾長特別講演と銘打って、みっちり2時間の早川節を堪能いたしました。
電塾=早川塾長、というイメージは誰しも抱くものですが、勉強会に参加してみればおわかりなのですが、実は塾長の講演って、そうそうないのです。もちろん、毎回、勉強会において司会進行役なのですが、まとまって一つのテーマでのお話をする機会は年に一度あるかどうかです。僕もそうですが、塾長ファンにはいつも勉強会で思う不満の一つが、塾長のお話が聞き足りないという点です。
そんな意味でも、この日、朝から勉強会に参加された方はラッキーだったといえます。
内容的には、デジタル画像全般の運用についてですが、後半、アドビ「Lightroom」の使い方に多くの時間を割かれていました。塾長ご自身、Lightroomに並々ならぬ思い入れと、高い評価をされているからでしょう。一日を通して会場にいらっしゃった方には、午前のLightroomと午後のApertureと、2大新興アプリにふれることになり、興味深い対比の一日だったと思います。
恒例 自己紹介 自己主張
恒例の自己紹介、しかも長かったですね〜。僕もそうですが、後半の人は前半に話した人に対しての意見助言が入るので、長くなる傾向があります。
ただ宝石の原石のような、ヒントとなる話も多々あり色々とご紹介したいのですが、このパートは参加した方だけのお楽しみ
、、ということで割愛いたします
■「メジャーバージョンアップしたApple Apertureの検証」
電塾運営委員、電塾会友
Apertureを今回取り上げたのはつい先日、メジャーバージョンアップされたためです。バージョン2となって、いっそう使いやすくなったインターフェイス、高速化されたブラウズ機能、強化された画像処理機能、この3つが主な変更点です。
まずは塾長からApertureのアウトラインのご説明から。
数年前、ApertureとLightroomが世に出ると言うときに、電塾や、フォトショップワールドでもさんざん両者の比較、対決をやってきました。当初の出だしは両者はそれほど違ったコンセプトではなかったのですが、メジャーバージョンアップをした後は、その性格の違いがより鮮明になった感があります。
塾長の説明でもその点が触れられています。Apertureは「プロジェクトという名前で管理」し、基本は「一つのデータベース」を使うという点。対してLightroomもベータテストの時は同じようなコンセプトでしたが、商品化、さらにバージョンアップを経て、今では、「カタログで管理し、カタログはいくつでも作成できて、それを切り替えながら使える」というように、変化してきました。
この変更点は、実は使う上で非常に大きなポイントなのです。Lightroomの変化は電塾を初めとしたベータテストに参加したカメラマン、フォトグラファーからの意見を取り入れて変わったのです。塾長がLightroomに並々ならぬ思いがあるのは、その歴史があるからです。
Apertureを使う上で、この「一つのデータベース」というコンセプトを頭に叩き込んでおく必要があります。
多くの商業カメラマンは一つの仕事が終わると、その画像はほとんど必要なくなります。Lightroomではカタログを仕事ごとに切り替えればいいのですが、Apertureはプロジェクトで一覧表示されてしまいます。もちろん、一括削除をすればいいのですが、現実的にはどうでしょう?
次に運営委員の金田さんより、デジタルカメラ直結撮影のデモ。
これはAperture2から新たに加わった「テザー」という機能ですが、僕を初め多くのスタジオフォトグラファーは期待がふくらんだことでしょう。なぜなら、デジカメ純正ソフト以外でカメラ直結撮影が出来るのですから。(一部の例外はあります。フェーズワンとキャノンなど)
金田さんのお話では、とにかく情報不足で、やってみるしかなかったとのこと。
取り込みですが、リモートでシャッターは切れます。ただ、カメラにカードが入っていないとシャッターが切れません。
ただシャッターが切れるだけで、カメラのコントロール(シャッタースピード、絞りの変更)などは一切できない。カメラ本体に入っているカードが一杯になったら、取り込みは終了。
どうも、撮影後カードに書き込んだデータを読み込んでいるのではないか?と言うことです。確かに純正以外のソフトで直結撮影は、このやり方でないと無理でしょう。ライブビューが出来るとか、各種設定変更が出来るとかは、これだけ世の中に沢山のカメラが出ている中で、個別に対応は困難です。
ただ、この方法論を良く思いついたなと、僕は感心いたしました。メモリーカードからの読み込みなら、他社ソフトでも応用は可能ではないでしょうか。
次に玉内さんからはプリント、出力の部分で検証。
全体的な使用感としては、インターフェイスの変化にとまどい、独特な言葉の問題でとまどい、、と言うことです。バージョンやマスター、ボールトなど、このAperture独自の言い回しがあります。もちろん、Lightroomにもそれなりの言い回しがあるのですが、、、多くの方がすでにLightroomに慣れてしまったので、余計にApertureの言い回しに違和感を持ってしまうのでしょう。
本題のプリント、及び出力ですが、煩雑なステップにいらつく場面が多かったそうです。分からない人はシステムに任せておく、、このスタンスが必要だと。プロファイルの設定なども、どこでやるのか?非常にわかりにくい。
このあたり、プリント、出力が非常に簡単なLightroomと、そもそものコンセプトが違う感じを受けました。
さて、トリは別会場とつないだ廣瀬さんからのプレゼンです。
廣瀬さんはアップルフリークとしても名高い写真家ですが、Aperture使用者としても有名です。今回の勉強会はApertureを取り上げるなら廣瀬さんにお願いするしかないとさえ、運営委員の誰もが思いました。
廣瀬さんのデモはまずはクィックプレビューから。
Apertureは画像表示にクィックプレビューとプルーフ画面の2種類があります。Aperture使いこなしの肝はこのモードの切り替えです。クィックプレビューでは表示が非常に速い。これでの閲覧、選択は、廣瀬さん曰く、「フォトの翼もうかうかしていられないくらい」と評するほどです。ただし、ピントチェックなど、拡大率の大きくしたいときなどはプルーフ画面にしないとなりません。プルーフ画面にした瞬間、動作の遅さは、僕には耐えきれないほどです。Lightroomのように読み込んだ画の表示データを別に保管するというやり方を取っていないようで、等倍表示させた画像を、再度見るときなど、最初と同じだけ待たされます。クィックプレビューではRAWに内包されているJPEGデータを表示に使ってるので早いのですが、それ以上の拡大率になると、どうしてもプルーフ画面表示で一枚ごとに現像して表示させるしかありません。
このあたりの使い勝手を、どう慣れていくかは使う人次第でしょう。
全般的な感想ですが、Apertureならではの使い方の提案がされると良かったと思いました。ただ、そこまで使い込んでいる人間が周囲にいなかったのは、残念でした。
文: 湯浅立志