今回レポートを担当させていただきます、電塾運営委員の湯浅です。BBSではtatsphotoのハンドルで書き込みさせていただいております。
今年2006年、第一回目の電塾定例勉強会は毎年のことですが、ちょうどこの時期に開催されている[PAGE2006]ジョイントイベントとして池袋サンシャインシティ文化会館(701会議室)にて行われました。
ちなみにこの回だけは年間を通して唯一会費無料、しかも平日に行われます。そんなこともあって、いつもの定例勉強会とは違った一般会員さんが多数参加されておりました。その反対に、平日と言うこともあって、会社員の方たちの参加が少なかったのが印象的でした。
まずは早川塾長からの挨拶からです。
初参加という方も多いようで、塾長からは電塾の概要が説明されました。電塾創設の時と現在ではデジタル撮影での環境も大きく様変わりしています。今では電塾の初期の時とは違った役割が求められているのかと感じています。
なお、今年の1月に電塾北海道支部が立ち上がりました。今後は九州にも立ち上げの予定があります。北から南まで日本全国に支部が出来てきますので、電塾本部を中心に様々なデジタル撮影関係の交流が持てるのではないかと思われます。
次に自己紹介ですが、運営委員の永嶋さんから電塾内部の部会についての説明がありました。
今までアート部会があったのですが、事実上、活動がそれほどされていなかったと言うこともあり、それをソフトウェア部会に名称変更、永嶋さんが部会長を務めることになりました。本日のタイトルもそうですが、デジタル撮影とコンピューターソフトは切っても切れない関係です。次々に新しいソフトが出てくる現在、それを集中的に扱う部会になるのではないかと期待されます。
また、この日の3次会は永嶋さんのスタジオでやると言うことで個人的に楽しみです。
その他の方たちからも自己紹介がありましたが、その中から2,3ご紹介させていただきます。
運営委員の山田久美夫さんからは日頃撮り貯めていた風景の写真で、今回写真集の企画が持ち上がったというおめでたいニュースでした。写真を生業としている者、常日頃の作品作りが大変なのはよく分かります。その中でもちゃんと作品作りをされている方も多いので、僕としてはイイ刺激になりました。
それと今回、女性の参加が勉強会始まって以来の最多数という、記念すべき日でした。といっても8人でしたが、、、結婚していたり、子供が居たりすると、なかなか土曜日に勉強会に出席するというのは難しいので、今回は平日の昼間だったので来てみましたということでした。
託児所を設けるという意見もありましたが、なかなか現実的には難しいのですが、なんとか皆さんがんばってご参加いただけるとうれしいです。
さて、ここで来月の勉強会のお知らせですが、来月からデジタル撮影の入門講座を開きます。いつもの定例勉強会があまりにレベルが高いとお思いの方もいらっしゃるようで、本当の基礎からの勉強会を開いてみようと言うことになりました。次回は有明で10時から開きます。お昼までは入門講座、午後からはいつもの定例勉強会という2部構成になります。午前だけの講座は1000円で受講できます。通しで1日の方はいつものように5000円になります。また、初めての参加の方は、本部運営委員から紹介状を貰えば初回のみ無料受講になりますので、見てみたいという人はご連絡下さい。
最後に飛び入りで運営委員の山田久美夫さんからまだ発売前のライブビュー機能搭載デジタル一眼レフ オリンパス「E-330」を持ってきていただきました。
一眼レフタイプながらライブビューが可能という珍しいモデルです。山田さんは「実像ファインダーからEVFモデルへの移行期のちょうど中間のモデル」と評していました。プロカメラマンの中にはこのEVFに馴染めない人が多いのですが、(僕もそうなのですが、、)アマチュアの方たちは一眼レフでも後ろの液晶にライブビューをしないのが理解できない、納得できないという人が多いようです。将来的には多くの一眼レフタイプのデジカメがライブビューになっていくと思われますが、その過渡期的な製品が330でしょう。山田さんは実際に使ってみて、「結構便利」と笑っていました。オリンパスはなかなか面白いカメラを出すメーカーだなとちょっと感心してしまいました。
電塾ハードウェア部&ソフトウェア部委員 永嶋 サトシ
アドビシステムズ株式会社 マーケティング部 栃谷 宗央
Adobe「LightRoom」
最初に早川さんからAppleのapertureの説明がありました。
この日のメインはAdobeのLightRoomですが、その話の前にapertureの話は避けて通れないでしょう。
大手メーカーがプロ写真家向けに特化したソフトを開発、発売するのは画期的なことです。マックユーザーのカメラマンには期待のソフト、apertureでしたが、ハードへの要求レベルがかなり高めの設定と言うことや、値段が52000円(アップルストア)というやや高めの設定ということなど、実際に使う段になるといくつかの?マークが出てきました。特にハードのハードルが高い。G5クァッド、30インチのAppleのディスプレイをDualで使うとかなり快適と言うことですが、そこまで揃えられる人はそうはいないでしょう。
apertureはAppleの画像管理ソフトiPhotoの発展系と見られますが、RAWデータのブラウズに特化しています。MacOS(Tiger)と一体となった画像管理を行う構造となっています。一般的なアマチュアレベルの画像管理には非常に優れたソフトであるiPhotoですが、プロで使っている人はほとんどいません。理由はその独特な画像管理構造にあるのですが。プロの中でも自分の家族の写真はiPhotoにしているとか、プライベートの写真はiPhotoで管理しているという人も多いと思われます。
そのあたりの使い勝手をふまえて、今回のAdobeのLightRoomを見ていきたいと思います。
電塾ではおなじみ、Adobeの栃谷さんからLightRoomの概要の説明からです。
LightRoomですが、まことしやかなウワサではマクロメディアの開発でAdobeに吸収されたことで、今回、Adobeからの発売になったという説がありましたが、数年前から開発されたAdobe純血のソフトだということでした。現在USAdobeのサイトからベータ版がダウンロード出来ます。BBSでも話題になりましたので、すでにお使いの方も多いと思われます。この会場でも約1/4位の人がダウンロード済みというお答えでした。
さて、このLightRoomですがフォトショップ開発中にPhotographerのニーズが固まってきたと言うこともあり、フォトショップではカバーしきれない部分を補完するという意図の製品だそうです。決してフォトショップが必要なくなるというソフトではないそうです。(同じメーカーなので当然ですが)プロフェッショナルな写真家を対象に大量の写真を取り込み、整理し、選択し、それを公開(印刷、プリントアウト、ウェブ公開などを含める)するソフトです。多くのカメラメーカーのRAWデータを扱えることも特徴です。
オープンで標準化された柔軟性の高いワークフローを目指して、更にクロスプラットフォーム(win、Mac)、妥当な必要システムを設定しています。なお、現在はパブリック・ベータ版でマック版しかありません。いろいろな人に使ってもらい、フィードバックをAdobeのサイトに送れます。カスタマーフィードバックが終わった後、今のところの予定では06年後半にwin、Mac版を発表予定だそうです。(注!発表であって、発売ではない)ちなみにフィードバックは英語のみです。
会場では栃谷さんからデモをしていただきました。開発の方からの中川さんからもご説明いただきました。
画面の構成は「ライブラリー」「develop」「スライドショウ」「プリント」が一つ一つがモジュールになっている点が特徴です。ライプラリーから始まり、画像読み込み、選択後、developに移り、現像、そして、プリントなどのモジュールに移っていくという、視覚的にも直感的でわかりやすい構造になっています。このモジュールは後から組み込み可能で将来的にはサードパーティに公開されていくようです。
栃谷さんからは使いこなしのポイントとしてショートカットを使っていくと言うことをデモしていただきました。フォトショップと同じように、数々のショートカットが設定されています。(ヘルプから参照可)
ちょっと覚えるだけで表示モードの切り替え、拡大、写真の比較などがワンタッチで出来るようになります。
僕がこのLightRoomを使ってみて、最初に気になったのはiPhotoのように画像データをどこかに格納してしまうのではないか?と言う点でした。
これに関しては写真の取り込み時に4通りの取り込み方法があるということでした。
1)元データにリンクを張っていく
2)元データをコピーしていく
3)元データ自体を移動する
4)元データをコピーしながらDNGに変換して取り込み
人によって、またはプロジェクトによってはどの方法が適しているのかはcase-by-caseでしょう。自分で使いやすい方法を模索していくしかないと思われます。
RAWデータの現像ですが、フォトショップのカメラRAWプラグインと同じエンジンを持っているそうで、現在113機種のデジタルカメラをサポートしています。僕はフォトショップのplug-inは使っていないので分かりませんが、使っている人の感想ではフォトショップのplug-inよりも使いやすいと言うことでした。同じように使っている人の感想ではコンタクトシートが使いやすいと言うことでした。
次に運営委員の永嶋さんが司会になり、質問タイムになりました。
永嶋さんからは「閲覧と現像のみで画像処理はしない人がメインターゲット?価格は不明?」という説明がありました。RAWデータの現像は出来ますが、たとえばゴミ取りなどの機能はありません。撮影した後、修正無しで納品出来る人が対象になるでしょう。永嶋さんからはすでにゴミ取りなどは出来た方がよいのでそのツールを搭載希望という要望を出されたとのことです。
また価格が不明な現時点では、どんな機能をユーザーが望むのか?難しいところであります。1万以下で買えるソフトと10万円のソフトでは当然要求レベルが違ってきます。フォトショップよりは安いと思われますが、どのレベルの価格ゾーンになるのか?非常に興味があります。
会場からの要望としては「Phase Onec1のようにキャプチャーがしたい」というご意見もありましたが、このソフトの本筋とは違う気がします。
会場にはBBSでもおなじみのGattoさんがいらしていましたが、ご自身のブログでもLightRoom関連の文章を書いているくらいLightRoomに入れ込んでいらっしゃいます。ハードディスク1台分の画像データを読み込ませていたら、2日間くらいかかったと報告していました。
これは画像データから一枚一枚いくつかのサムネイルデータ(largeとsmallのように大きさを変えていくつか)を作り出すためですが、この最初の読み込み、サムネイル作成に時間が掛かるためです。
ただ、いったん作ってしまえば画面表示にはそちらのサムネイルデータを利用するので、表示が早く快適にブラウジングできるようになります。
つまりはこのLightRoomのキモはここになります。
雑誌や広告の仕事をやっているカメラマンなどでは、一度読み込ませた画像を再利用することが滅多にありません。納品してしまえばその画像データはHDから削除してしまう撮影スタジオも多く存在します。時間を掛けて作ったサムネイルデータも利用しない局面が多いでしょう。
かたや作品としての写真を撮る、またはそれを売っている写真家などの方たちには、たとえ取り込みに時間が掛かった(2日間でも)としても、将来的にそれによって受けるメリットからすれば、たいしたことではないでしょう。
ご自身がどちらのタイプの写真分野なのか?それによって「使えるソフト」なのか、「使えないソフト」なのかの評価が分かれると思います。
運営委員の山田久美夫さんからは「なぜ、ウィンドウズ版のベータ版を出さないのか?」という質問がありました。明確な理由はお答えがなかったのですが、あくまで僕の想像ですがAppleのiPhotoを意識してマック版のみのベータ版公開になったのではないかと推測しています。この両者の比較から、よりメリットのある方向性に製品版は変えていくのではないかと思われます。
まだまだ発展途上のソフトという感はありますが、バージョンアップによって、カメラマンや写真家に欠かせないソフトに成長していくと言う予感はあります。特にMacにはiPhoto、apertureと言うラインが存在していますが、ウィンドウズ陣営には同じコンセプトのソフトは見あたりません。画像取り込みをいったんやってしまえば後は快適になると言うことから、一度このソフトにしてしまえばソフト乗り換えもし難くなると言う、メーカーからの「囲い込み」作戦と言う見方もあります。もちろん、良いソフトなら末永く使っていきたいものですが。
どちらにしても「良いソフト」に育っていってくれることを希望しています。
さて、第3部はここのところの勉強会で恒例となりました、「救済講座」です。
まず、永嶋さんからはアップルストア銀座で講座を開くというご連絡がありました。3月22日の18時30分から、アップルストア銀座です。お時間のある方は是非お寄り下さい。
早川さんからは、LightRoom、apertureのお話から、デジカメラのお話まで及び、今までの総論をお話しいただきました。結構、このお話しが面白くて、これだけ聞いていても「救済」されたかなという気持ちでした。
この回は会場から日頃抱えているいくつかの問題点を伺いましたが、ご自身のコンピューターでの問題点なので、この場で再現も出来ないので、推測でお答えという形になりがちでした。
その意味では疑問点をお持ちの方はラップトップを持ち込んで皆さんに分かるようにプレゼンするという姿勢も、今後は必要かと思います。
次回以降、ご参加の皆さんは是非、ラップトップコンピューターをお持ちになってご参加下さい。
以上、2月の勉強会レポートでした。
ティッシュ配りの事務局長 金田さん。2次会の場所のお店を連絡するためなのです。
いつもながら裏方、ご苦労様です。
これが3次会の目玉!電塾北海道支部の山田さんより毛ガニのプレゼントでした。
おいしかったです。ありがとうございました。
文: 湯浅立志