2005年 電塾2月のレポート
 
 
電塾 in PAGE2005
 
 
第一部 ご挨拶と2005年の展望 電塾塾長 早川廣行
 
 

 今年最初の電塾は、PAGE2005のイベントとして会期の最終日に行われました。今回は無料イベントということもあって入りやすかったのでしょう、初めての方も数名いらっしゃり、最後は残り少ない空いている席を探す姿も見られました。

 

昨年から、一眼レフタイプは各社から8機種、高機能・高画質・低価格のデジタルカメラが登場。インクジェットプリンタも5万円台からと低価格でありながら、高画質なプリンタが登場しました。メーカーさんもプロファイルを使った設定をはっきり言うようになり、純正紙ときちんとした設定を使うことで安定した色見本にも使えるプリントを簡単に手に入れることが出来るようになりました。
また、AdobeRGBワークフローの普及、スタンダード化、印刷技術の進歩と遅れていた作業環境の標準化によって、 2005年はデジフォト環境の整備が整うと塾長は予見しています。

 今回塾長は、先週発売になったばかりのMac Miniでプレゼンをしようとしていましたが、残念ながら準備不足でできませんでした。Mac Mini は5万円台と低価格ながら、6Mクラスのハンドリングにも十分なスペック、そして何よりコンパクトと、セカンドマシンやモニタの運搬を工夫すればロケ用マシンとしても最適ではないでしょうか。ただ、ノートブックのように内部へのアクセスが基本的には不可、メモリスロットが一つ(Max 1GB)、HDが2.5inchと同クロックPowerMacと比べてしまうと拡張性、体感速度では劣るかもしれませんが、PowerMac Cubeユーザーの私は非常に気になっています。

 
 
第二部 自己紹介&自己主張の時間 参加者全員
 
 

今回の自己紹介も予定の時間をオーバーしましたが、多くの方が画像・メディアの破損についての経験談でした。私は今までにそういったトラブルに遭遇した事はありませんが、明日は我が身。これからの撮影でもよりいっそうの注意をしたいと改めて思いました。

また、最後にX-Riteの富川氏が飛び入りで、Pulse ColorElite Systemをご紹介頂きました。Monaco EZ Colorでは汎用スキャナを使って測色していましたが、パルスでは分光測色計で測色するようになりました。といっても i1のようにモニタ・印刷物の測色に1つの測色機を使うのではなく、モニタの測色には今まで通りMonacoの測色機を使い、印刷物の測色にはパルス分光測色計を使うことになります。また、パルス分光測色計にはバッテリ・メモリが内臓され、オフライン測定が可能になっています。
価格はパルスカラーエリートRGB UV が176,400円、同 ディスプレイ測色計(Monaco OPTIX XR2)付 が218,400円となっていますので、 i1 PHOTOの367,500円と比べても十分対抗できると思います。

 
 
第三部 「限定生産 Mac G5 専用メモリの紹介」
株式会社アドテック 岡田康裕様・吉本賢一郎様
 
 

 岡田氏の説明によるとDOS/V機を1とした時、Macの不良比較は2.3倍にもなり、そのうち相性問題といわれるタイミングマージンの相違と電力不足が約8割になるということです。アドテックさんがAppleに確認したところ、特性重視の為、特定のDRAMに依存した本体設計をしている。負荷の具合によってCPUやメモリの周波数・アクセスタイミングをフレキシブルに変更している。ということで、メモリ選択が難しくなっているのだと思います。

 私的な用途で安いほうが良いとお考えなら、自己責任でDOS/V機用のバルクメモリでも良いと私個人は思います。JEDEC準拠品やmacでも使用されているSAMSUNGチップを使用している物は、バルク品と比べて価格は少々効果ですが安定感を求めるユーザーにとっての目印になっています。
しかし、私たちが仕事で扱う為に求めている物はシステムの安定であって、不確定な物を安価で手に入れることではありません。
頻繁にDOS/V機を自作している人は知識と経験(と自己責任)を元にメモリを選択できると思いますが、私たちが簡単に安定したMAC用メモリを手にするには、Apple純正品しか選択しようがなかったと思います。

 アドテックさんが販売している Mac G5 専用メモリでは、JEDECの設計データを元に、Mac純正メモリに採用されているメモリモジュールの高品質な物を使用し、製品自体も一つ一つ出荷前にチェックしているそうです。あるメモリメーカーも一つ一つの出荷前チェックしその結果をメモリに付属して販売していますが、PowerBookとの相性問題が出た為に一部ラインを止め、設計の手直しをしているようです。
 アドテックさんや某メーカーのように高品質で安定し、不具合があればすぐに修正する。この姿勢は確かにコストに反映しますが安定に代えられる物はないですし、他のメーカーさんやもちろん私たちも見習わなければいけないでしょう。


 JEDECは米国の電子デバイスの標準化団体で、ここで規格化された内容が世界標準になっています。標準の内容は以下の三点となっています。
・DRAMの製品仕様
 動作状態を決める各信号の組み合わせや、タイミングスペックを規定。
・メモリモジュールの製品仕様
 Pin out、外形寸法、ブロックダイアグラム等の使用を規定。
・設計データ(CADデータ)
 純正メモリ(半導体メーカー製メモリ)もこの設計データを使用している。


 ちなみに余談ですが、某氏にメモリ取り付け手順を聞いたところ、
1. 電源ユニットに触れる。
2. 電源コードは抜かずに、メモリの取り付け。
3. コンピュータを起動する。
とのことでした。

本人曰く 「電源に触れてアースしてもすぐに静電気は溜まる。電源コードを繋いだままならアースされているから問題ないだろう。」とのことでしたが。
「危険ですから絶対にまねをしないでください。」
確かに繋いだままならアースされてはいますが、メモリスロットには通電されているのでメモリや最悪ロジックボードを破損します。これまでにその方法で何度かメモリ取り付けをしているようですが、なぜか不思議と故障といったトラブルに見舞われていないので本人はこれで良いと思っているようです。

メモリ取り付け方法を検索してみると、以下のように出ました。(前後の細かな指示・手順は省いています。)
1. 電源コード以外の全ての周辺機器のケーブルをコンピュータ本体から取り外し、コンピュータ内の金属部分に触れてから電源コードを抜く。
2. メモリを正しく取り付ける。
3. 取り外したケーブルをコンピュータ本体に繋げ直して、コンピュータを起動。

 慣れていない人はもちろん、慣れている方も、パソコンだけでなく他の機材の交換手順も、もう一度確認してみると良いかもしれません。

 
 
第四部 ニコン D2xの画質検証結果報告
塾長塾長 早川廣行・鹿野 宏
 
 

電塾技術部部長 阿部氏が体調を崩され、代わりに塾長と新潟からとんぼ返りの鹿野で、皆さん期待されているでしょうNIKON D2x の画質検証のが行われました。

 まずは恒例の電塾チャート。注目するのは1pixごとのon/offの部分。今まで他のカメラではうまく解像・処理できていなかった部分でしたが、D2x では解像していないもののきれいに同心円に見えています。さらに小さい0.8pix で他のカメラの1pixの同様いつもの模様が見えてきますから、D2x の1pix の底力がお分かりになるかと思います。また、高感度撮影時のシャドウノイズ抑制処理が良くなり、高感度フィルムのような絵になるノイズになっているようです。

  代わって 鹿野は、常時撮影している衣料の赤外反射に着目していました。D1xでは、染めが浅かったり黒や緑の衣料が強弱はありますが茶色になることがよくありました。塾長は赤外反射にそれほど効果はないと仰っていましたが、鹿野の検証によるとD2xでは完全にとはいかないまでも効果はあると言っています。今までのフィルターで抑えられなかったのは、光源によって異なる赤外領域の立ち上がり・ピークが光源によって代わる為で、D2xではその異なる赤外領域の立ち上がりのバランスの良い部分でカットするということです。今までは何枚も重なっていたバンドパスフィルターが1枚になった為、カメラのレスポンス向上に貢献しているとも言っています。また、撮影時にあらかじめホワイトバランスをきちんと取ることで、仕上がりのダイナミックレンジがハイライト側で約1と1/3 EV、シャドウ側で約2/3 EV 広がるとのことでした。

この話を聞いた時、 私が写真学生の頃、特別講演でいらっしゃった塾長が仰っていた、レンズ前処理という言葉を思い出しました。JPEG,RAWは関係なく、撮影前にきちんと処理しておけば、よりおいしいデータになる。それから撮影前は気をつけていましたが、今回改めて再認識させられた電塾になりました。

今回は残念ながら恒例の親睦会はありませんでしたが、終わった後の会場では大勢の方が D2x とD2x で撮影したプリントを熱心にご覧になっていました。恒例の親睦会がなかった分じっくりとご自分の目で検証できたのではないでしょうか。

写真:電画スタッフ 文:石川 恵愛