フォトキナ2004登場の最新機器報告というタイトルではあるが肝心の特派員の三名がまだ日本に帰ってこない。というわけで逆に日本でこそゆっくり触れるCANON EOS 1Ds Mark II、Nikon D2X という電塾になりました。(ほんとはこんなにネタが無かったはずなのだが、思いもかけず、出し物の内容が濃く、多い電塾になってしまった)
自己紹介と自己主張では久々に北海道からやって来た山田氏のイチローの三安打世界新記録の話しを始め、北海道のセミナーの話題、笠井さんの自分の目を信じるカラーマネージメントのお話し(でも、それが世間に伝わる時にはそのための環境構築のお話しがごっそり抜けている事が多いね)、アークスタジオではOS Xサーバを中心にシステム一新、しかしG5のトラブルの話し。しかし、今日は皆さん早く自己紹介を終わり、本題に入りたいのか短めでした。
アスカネット株式会社 代表取締役 福田 幸雄様
驚く低価格で写真集を制作できるアスカネットさんの写真集制作システム。実はもっとゆっくりご紹介いただくはずだったのですか、あまりに出し物が多かったため、今回は速足で紹介していただきました。
印刷用紙にあらかじめコーティングした上で印刷、さらにコートをかける方式で印刷線数が少ない割に十分な高級感を持った仕上がり。なんと40ページのアルバムが(それもきちんとした装丁の)¥10.000程度から出来てしまうのです。
もちろん印刷機のキャリブレーションもきちんと取り、繰り返し再現にも自信を持っている様子です。写真に特化したオンデマンド印刷、しかも使いやすい独自の編集ソフトも紹介されました。
単なる写真集だけでなく、さまざまな用途にも応用が可能なようです。
http://artbook.jp/index.cgi?site=ASABJ00001
CANON EOS 1Ds Mark IIデモ
キヤノン販売株式会社 プロシューマー推進課 金原 克己様
さて、待望のCANON EOS 1Ds Mark IIはのっけから実機が会場内を順番に回され、すでに発注していた方々が安心する様子も見受けられました。柳沢氏は今こそ貯金をはたく時とおっしゃいましたが、実はそれでももう一回貯金を始めるようにとの発言もありました。ん?どういう事?
金原氏から、16.7MB、秒間4コマ、32枚連続撮影、0.3秒の起動時間、7.2μというスペックが紹介され、これも当然といえばあまりに当然な進化を遂げたCANON EOS 1Ds Mark IIです。
上の写真でマイクロレンズがもっこりしているのがわかるでしょうか?珍しい写真です。ダイナミックレンジは相対的に開口率が小さくなっても、このもっこりとしたマイクロレンズや開口位置のずらしなどによって、最終的にダイナミックレンジはさらにひろげられたという事です。
ノイズリダクションかけなくても非常にノイズレス。若干彩度ゆたかにチューニングされ、RAW以外は連続撮影可能枚数は飛躍的に増えましたた。何しろRAWデータは16.6MBも容量があるのですから。
SDカードを使用するともっと早くなるそうです。(もちろん単価は上がりますが)
フル充電で600カットから1200カット撮影可能とバッテリーの持ちも倍の能力になり、(というよりも省電力設計のおかげですね)ディスプレイがとても見やすくなりました。シャッター耐久回数は20万回で縦横位置検知機能、優先無線LANはニコンさんと同じ802.11g/bを実現。さまざまな使い方が想定されます。
DPPも一ヶ月しか経っていないのに、v1.5となり、トリミング機能の追加、ヒストグラム、トーンカーブ表示が対数表示になり見やすくなったこと、ホイールマウスが便利に使用できるようにもなりました。
此処でご紹介は出来ませんが、RAW データを使用して実演されたシャドウの描写力は素晴らしいものがありました。
株式会社ニコン 開発部 芝崎 清茂/川村 晃一郎 様
第三部はニコンさんから三人の方が交代でそれぞれ、Nikon D2X に関しては川村氏、その基礎設計、Nikon Capture4.2に関して芝崎氏、待望のCCD クリーニングキットのデモを中島氏に行っていただきました。
最初は川村氏です。12MB 、新画像処理エンジン(まだ名前が無いそうです)あらたにsYCC色空間のサポート。連射5コマ秒、クロップ高速で8コマ秒、ノイズリダクションの高速化。操作性、機能アップ、多重露出画像合成機能、GPS対応、無線LAN802.11g対応という至極当然のようなスペックですがニコンさんらしく、DXフォーマットで、レンズ焦点距離1.5倍というところを確実にキープして性能をアップしています。総画素数4396×920開口率5.49μm。DXフォーマットである以上開口率はもう稼げませんが、内部はフル16ビット処理を実現し、ニコンらしい滑らかな階調処理、画素補間時に適用されるノイズリダクション、転送速度は7.5MB秒を実現し、その速度はNikon D2H をも凌ぎます。
図らずも早川氏に“順当に進化したNikon D2X は Nikon D2H いらず”と変な褒め言葉をいただいていました。
その連写コマ数は最低でもRAWで16コマ。使用するカードのスピードがアップすればそれに準じてさらにさらに速くなれるとの事です。
操作性20Dには遅れましたが、RGBヒストグラム表示、拡大表示は400%まで拡大コマ送りも可能、便利なヒストリーメニューや[ヘルプ]機能、立て位置撮影自動回転機能、ワールドタイム対応も搭載してきました。
JPEG圧縮時の画質優先機能が付き、容量優先と自分で選択できるようになった事は大歓迎です。多重撮影が付いて2〜10コマの重ね合わせが可能になりました。けれど、こんなのどこで使用するんだろう??
WT-2という新しい無線IEEE80211g実測で2Mbpsをたたき出し、Nikon Capture4.2からワイアレスでコントロールでシャッターを切るなどの全てのコントロールが可能です。PTP/IPという簡単に接続可能なマイクロソフト社と共同開発した技術が使用されており、今後さまざまな展開を見せそうで注目です。
レリーズタイムラグは 37ms、起動時間 0.2s。一本のバッテリーで1000枚以上、条件によっては2000枚近く撮影可能という長寿命も実現しています。バッテリー1本で普通の仕事は終わってしまいそうですね。
二番手におなじみの芝崎氏が登場です。センサーはソニーと共同開発のCMOSで当面はニコンさんだけの供給ですが、4色分離読み出しをしています。それには訳があり、ノーマルな光源(5000ケルビンの自然光)の場合、G×1、R×2.2、B×1.8と各チャンネルにアナログ増幅を施し、全色のバランスをあらかじめとり、量子化誤差を抑えているということです。CMOSのXYアドレス素読みだしが出来るからこそ、出来た技術であり、帯域ノイズを減らす効果にも役立っているのだそうです。
カラーモード1,2、3それぞれ AdobeRGBに対応するようになり、彩度の高い AdobeRGBを直接取り出す事も出来るようになりました。
Nikon Capture4.2も機能強化され、新登場です。レベル表示機能が独立し、グラフから画像の分布位置を読み取れる機能もつき、ユーザーフレンドリーです。画像の傾き回転入力機能もついに付きました。待ってました!私も以前からお願いしていた機能です。建築の撮影時にはきっと役立ちます。digital DEEはD-Lightと名称を変更し、さらに使いやすくなりました。スピードはアップしているかどうか分りません。
新ノイズフィルタや色変換(モノクロフィルタ)機能、ニックテックプロというプラグインフィルタが使用できるようになり、ますます多機能ぶりを発揮しています。元データはそのままにパラメーターとしてフィルタをかけるので後から完全復帰が可能という事です。
LCHコレクションにカラー明度コントロールが追加されました。これは私はきっと毎回使用するだろうなと思います。とても待ち焦がれていた機能追加で、早く使用して見たいと気がせきます。解像度の指定も出来るようになり、ほとんどPhotoshop を立ち上げる必要のないRAWワークフローが組めそうです。
そうそう、RAWデータ同士を結合させ、あたらしいRAWデータを作成する機能も追加されました。あまりピンと来ないかもしれませんが、ダイナミックレンジ拡大にその威力を発揮するのではないかと期待しています。
CCDクリーニング講座
三番手はニコンカメラ販売株式会社 プロサービスセンター 中島 斉一さんで、航空写真の大ファンであるにもかかわらず、今日は電塾でクリーニング講座を行ってくださりました。感謝!。実は今日はめったに見る事の出来ないアクロバットチームが来日していたにもかかわらず、という事らしいのです。
とても此処に書けるような内容ではなく、「すごく難しそう!」です。それでもきちんと訓練し、手順をちゃんと覚えれば、何とかなりそうな気もしてきました。
ニコンサロンで12月まで講習会をやっております。皆さまもどうぞ。
電塾塾長 早川廣行
まずは、ホットなAdobe DNGの話題から。
各社ばらばらのRAWファイルフォーマットをひとつにしよう、あるいはTIFF,Jpegに次ぐ、デジタルカメラユーザーのための共通フォーマットを提供しようという骨子のお話しで、本来はAdobeさんが行うべきなのでしょうが、今回は早川廣行氏が行いました。
TIFF6.0 の拡張版とも言うべきフォーマットで、TIFF/EP準拠になるそうです。コダックさんのRAW データがこのフォーマットだったし、キヤノンさんもその流れを汲んでいるそうです。つまり、いきなり出来てきたものではなく、以前から存在していたフォーマットの改良版というわけですね。
アドビデジタルネガティブコンバータで解析できる RAWデータはDNGに変換でき、Camera Raw Plugin 2.3 で展開可能です。Photoshop CSユーザーは無償配付となり、私も昨日ダウンロードしました。(まだ使っていません)
各メーカーの独自の機能タグは保存され、メーカーがこのフォーマットに対応すれば、独自の機能はそのまま使用できるとの事です。さて、今後どのような展開を見せるのでしょうか?楽しみです。
その後、フォトキナ報告の前哨戦があり(といってもほとんどの目玉は此処で見られるのだけれども)やたらに内容の濃い電塾は閉会しました。
今月の一枚はAdobe DNGについて熱く語る早川塾長です。
二次会で電塾運営委員の作品アルバムを作ろうという機運が盛り上がっておりました。セルフポートレート集を出そうという案も出たのですが、即座にその場でたたきのめされ、却下されました。どうも夏の大勉強会の後遺症が残っていたようです。お風邪を召していた方もいらっしゃり、9時30分にはこれもお開きとなりました。
文:鹿野 宏