参加者全員
本日は自己紹介に時間がたっぷりととられ(なんと一時半から3時まで!)、言いたい放題(時間的に)の自己紹介となりました。この自己紹介を細かくご披露はできないけれども、(というよりもあまり大っぴらにできるお話でもない場合が多いので、これは電塾にいらした方だけが楽しめる特別おまけということでしょう。)このところ、皆さんネタを準備しておられるらしく、たのしい…とともに考えさせられたり、興味を引くお話をたくさん聞かせていただけました。しかし、これだけ時間をとっても、やはり時間通りには終了しない自己紹介、という訳で予定通り?約15分の延長となりました。
電塾塾長 早川廣行、技術部会部長 阿部允夫
ついに発売されたCamera RAw プラグイン日本語版についての大検証。徹底検証の大御所である永嶋氏が本日は欠席のため、電画軍団が検証しました。早川氏から、もちろんその弱点、欠点もあるものの、このプラグインの有効性、デジカメの今後の売り方に対する問題提起もされました。
また、MD研究会からも疑問点、危惧される使い方などのご意見も出され、
電塾 Vs MD研究会、という仲の良い対立(トムとジェリーみたいなものかしら?)のシーンも見受けられました。
Nikon D1X や FUJIFILM Fine Pix S2 Pro などはその元データの特殊性もあり、実際専用ドライバで開いた画像とプラグインで開いた画像にははっきりと差があります。しかし通常の画像ではそこまでは見分けることが出来ないでしょう。また通常のタイプの受光素子であれば、さほどの差は認められません。ということはCanon系の素直な配列の受光素子を持ったデジカメなどには、かなり有効かもしれません。事実、同レベルといって問題ないほどの仕上がりでした。(Adobe側ではあるシーンにおいては準製品を上回る仕上がりが期待出来るといっているようですが、これは出力されたデータの仕上がり感に何を期待するかによって、変化する物でしょう)
展開スピードはほとんどのシーンでプラグインの勝ちでしたが、長い間、動きが悪いと言われ続けて来たNikon Capture Editor が、ここにきて非常に健闘していたのが印象的です。
このプラグインの特性として、どのカメラのRAWデータを展開しても、色彩、質感の作りにおいて同じような(平均的な)画像になることは、もろばの剣のようです。使い方によってはカメラの個性を殺すし、よく言えば複数のカメラの画像の色彩を揃えることができるのです。ということは、何とかとはさみは紙一重、ということでしょうか?。使う側の心構えでどちらに転ぶこともあるでしょう。使用感における最大の利点は、Photoshop の[ファイルブラウザ]上でサムネールを確認、選択し、そのまま[開く]ことができる。この手軽さを否定することはで来まい、というところに話は落ち付いたようです。
その後、前回はほとんど触れられていなかったJpeg2000の検証報告が阿部氏から報告されました。
Jpeg2000は大きな可能性を感じさせます。いままでのJpegで保存した場合の、半分の量に圧縮した時にも同程度の質感が維持される事がわかりました。逆に言えば同じ圧縮サイズでははるかに奇麗な圧縮がされているということになります。以外と通常のJpegの欠点(エッジの強い部分に現れる強いノイズ)が浮き彫りになった検証でした。いまのところ圧縮ダイアログを開く時、また保存に時間がかかり、Jpeg圧縮の15倍程度の時間がかかります。昔のように専用ボードでも用意しないと、使う気になれないのは事実でしょう。
とはいえ、いずれ、CPUのスピードアップやアルゴリズムの改良により、標準的になるに違いない技術の一つかもしれません。
プリンティングディレクター阪本恵一
特別参加 デジタル通訳 MD研究会会長 郡司秀明
神田明神下のうまれ、という坂本氏は。アナログ(当時はわざわざアナログなんて言葉は使いませんでしたね)レタッチマンの神様的な存在です。大日本スクリーンの郡司さんの紹介で電塾講演が実現しました。
氏は現在はプリンティングディレクターとしてご活躍です。
デジカメデータの増加は製版の現場でも増殖しつつあり、それが、コミニュケーション、ルール不足、イメージの共有化ができないことにより、期待した仕上がりに届かないという現象を生んでいるようだ、という辺りから、氏のお話は始まりました。
自己紹介の替わりに、回覧していただいた著書のレタッチ技術手帳を拝見しました。ぜひじっくり読んでみたい本でしたが、講演はかなりのスピードで次々と変化するので、さっとしか目を通せないのが残念でした。現在も存在しているのであれば、ぜひ入手してみたいものです。
イメージ出来ないものはマネージ出来ない、と坂本氏はおっしゃいます。また元がわるけば、良く出来るはずが無い。顧客サービスを謳う会社が、サービスがいいとは限らない。小さなところでも気持ちのこもるサービスは違う。と矢継ぎ早にテーマを投げ掛けます。その間、実際の成果物を見本として回覧されます。実際に印刷された「現物」の説得力、長年現場に携わってきたその経験量に圧倒されてしまいます。
さすがに神田の生まれらしく、べらんめえ調で次から次へと出てくる失敗談、成功談など、ジョーク(小話?)を交えたお話に、ついつい引き込まれてしまいます。業界人でなくてもきっと興味を引かれるに違いありません。
職人の保守性や仕事をしているらしいが、何をやっているんだかわからない「サイレントオペレーター」というお話もありました。同業の柳沢氏や太田原氏が聴講席で、うんうんとうなずいている風景が会場内で見られ、印象的です。
ヒューマンカラーコミニュケーションの確率、ということを力説され、なぜ、ばらついた校正がでてくるのか、それらのバランスを直していた印刷機機長の職人芸がそろそろ消え筒ある現実など、現在の状況ににも警鐘を鳴らします。
□出口すっきりCTP
□入り口ぐちゃぐちゃ DTP
という標語?のご披露もありました。以下にお話の中で気になったフレーズをいくつか箇条書きにご紹介いたします。
□本機校正か、デジタルプルーフを信用しろ。
□700線ですっている文化堂印刷のし上がりを見てくれ、印刷はここまで再現出来るのだ。
□肌色はカラーポジから出されるものではなく、作るものである。肌色は美しい色彩だけでは作れない。光と影が演出する立体感が必要なのだ。
□いまのカラマネは川上だけ。
□なぜイメージを共有化出来ないのか現実を知り、ルール作りをしよう。
□カメラマンと製版のコミニュケーションをとる努力をする。
□良いカラーは大きくすればするほど、良くなるが、悪いカラーは大きくすればするほどぼろが出てくる。(製版業界の方々は、分版されたフィルム、を「フィルム」、あるいは「ハンコ」といい、原稿ポジのことを「カラー」と呼ぶらしい事を初めて知りました。)
□GIGO:ごみを入れれば、ごみが出力される。
□しかし、ごみを入れてもそれなりの仕上がりを期待することができる。が、良いカラーを入稿すればさらに良い仕上がりを期待出来る。
これらのお話を踏まえ、坂本氏が、原稿を出してくる側にたいて要求することは一つだそうです。色見本をつけて、具体的な要求をはっきりとかいてくれ、ということでした。たとえば、カラーバランスが狂ってしまったのなら、実はここが白い部分なんですよ、とか、仕上がりはシャープ目に、あるいは柔らかく、といったようなことです。適正なデータに、色見本と的確な希望が書き添えてあれば、良い仕上がりが期待出来るということです。印刷、製版のブラックボックスは実は開けてみれば、我々カメラマンがやっていることと同じ(対応するべき機械やそのノウハウはもちろん違いますが)であり、けして言葉が通じないわけではないのだとしらさせられました。
客先の要求を予想し、見当をつけるのが製版マンの仕事。確実なディレクションのできる人材のの存在も必要だろうと言います。オペレーターも希望する色彩を言葉で表現出来る事が必要だろうとも言われます。
コミュニケーションしているつもりでもコミニケーションギャップが発生していては意味がありません。どころか、さらに勘違いを生んでしまうこともあります。じつに主要な箇所では郡司氏が用語の解説、理解のための補足などをしてくださったので、今回はきちんとコミュニケーションが出来たと感じます。今日の同時通訳ってそういう意味だったんですね。
吟味した素材を、センスのよい、レベルが高い人間が判断することが品質の向上につながり、レタッチの分業化が、色彩管理、イメージ管理につながるとも言われます。デジタルで仕事をする我々も全く同じことが言えそうです。
徹底的にアナログにこだわる氏は大きな紙に(なんの紙だかは存じ上げませんが)マジックでテーマを大書きにしたものを持ち出し、白板の上に張って講演を続けます。PowerPoint や Photoshop の講演に慣れた私達にはあぜん、というより、「痛快」に感じるパフォーマンスです。(こんな言葉を使うと怒られるかもしれませんね)
その紙には、今後の方向性、キーワードとして。
□デジタルカメラ。CTP
□カラーマネージメント
□画質の向上
の三つをあげられ、その意味するところは
□デジタルカメラやCTPはこれから必要な技術。
□カラーマネージメントとはそれを生かすため、入口から出口までのギャップをなくすこと
□画質の向上にはヒューマンカラーが必要、ヒューマンカラーとは人間同士ののかかわり合いが作り上げる品質だとおっしゃいます。
それを実現するためには、手がかりを用意しよう。イメージの共有化をはかろう。データの確定化を急ごう、とおっしゃいます。
出所の知らないデータを基準も何も無く、「奇麗にしあげてね、健闘を祈る」といっても何も始まらない。どういったものを奇麗と思うか、データはどのような状況で作られたのか?具体的にエッジを出したいのか、諧調を重視したいのか、何が何でも表現しなくてはならない色彩のポイントはどこにあるのか、そういった事柄を私達も後工程にきちんと伝える努力をするべきだと考えさせられました。
面白くてたのしいお話は二時間という時間をあっという間に消費してしまいました。まだまだ、お話は尽きることを知らず、二次会も周りには、はた迷惑なくらいに盛り上がっていました。こういうお話をお伺いした後はいつも思うのです。今日、ここにこれた私達は幸せだな、と。散漫なレポートになってしまい申し訳ありません。レポートには再現出来ない「おいしい」ところが実はいっぱいあるのです。
写真:電画スタッフ 文: 鹿野 宏