ところが垂直色分解方式の場合は、RGB各色の「層」のセンサが重なって存在し、光はそのセンサの「層」が通過しながら情報として記録される。カラーフィルムの原理と同じだと考えて良い。色分離は完璧で偽色やモアレはなく、それぞれが明暗(形)の情報と色彩の情報を実データとして保持しており、水平色分解方式のように演算によって補完する必要がない。故に200%拡大は当たり前で場合によってはさらに拡大しても使用可能なデータを得ることが出来る。その威力はかつてのマルチショットタイプのデジタルカメラのデータを彷彿とさせます。
ただし、うれしいことばかりではなく、光が各層を通過しながら情報を記録する仕組みのため、光が通過する段階でパワーが減衰しやすく、十分な光量を確保できているうちは問題ないが、くらいシーンでの撮影は不得意となります。同じ意味で記録し得るダイナミックレンジも広いとはいえません。十分な光量を確保でき、コントラストコントールができるスタジオ撮影ではその能力をフルに発揮するでしょうが、条件の悪いロケやスナップでは苦しまされるでしょう。DS14を使いこなすにはこの特性を十分に把握して使用する必要がありそうです。
カメラとしての能力も以前のSD10に比較して品質が上がり、多機能ではないものの、基本的な能力は十分に持ちます。RAWデータだけでなくJPEGデータの出力も可能になった意義は大きいとおもいます。新開発のASIC(Application Specific Integrated Circuit)の能力は高く、もちろんRAWデータ品質に比較すればやや見劣りはするものの、実用範囲に十分に入るデータを書き出します。スタジオ内部メインで使用するカメラだと割り切ると、JPEG出力可能なことはメリットだといえるでしょう。
※垂直色分解とは
今更だけれどもちょっと復習。通常のデジタルカメラは水平色分解方式を採用しRGBGのベイヤー配列により、色彩を演算によって補完補正しながら計算する。そのため、実ピクセルの半分程が形を記録する情報の元であり、RGBに関しては実ピクセルの1/2~1/4の情報がその大元となる。故に600万画素のカメラであればその解像感の実力は450万画素程度となり、拡大できる安全係数は150%の900万画素程度といわれる。
ところが垂直色分解方式の場合は、RGB各色の「層」のセンサが重なって存在し、光はそのセンサの「層」が通過しながら情報として記録される。カラーフィルムの原理と同じだと考えて良い。色分離は完璧で偽色やモアレはなく、それぞれが明暗(形)の情報と色彩の情報を実データとして保持しており、水平色分解方式のように演算によって補完する必要がない。故に200%拡大は当たり前で場合によってはさらに拡大しても使用可能なデータを得ることが出来る。その威力はかつてのマルチショットタイプのデジタルカメラのデータを彷彿とさせる。
いわゆる一般的なAPSCセンサーよりも一回り小さいセンサーサイズを持つ所為でレンズの焦点距離は1.7倍となります。望遠側で200mmが340mm相当になるのは嬉しいけど、広角側で18mmレンズがやっと30mm相当になるのはちょっとつらいと感じました。
今回試用した70mmマクロは約 120mm。商品撮影には持って来いの組み合わせとなった。もっともシグマは明るい広角単焦点レンズをラインアプしているのでそれほどつらくはないかもしれない。
10~20mmという超広角レンズが17~34mmとなり、使いやすい広角レンズになるといえそうです。
いつものかなり意地悪な状況で撮影してみた。再シャドウ部ではいくらかクリップを見せる。またハイライト部を安定させるためには結構絞り込まないとつながらないようだ。シアンでかこった写真が上図でF7.1。一件よさそうに見えるが額の辺りでハイライト飽和を起こしている。下図の紫で囲ったF10の写真は上よりも1/3絞ったもの。ここでハイライトの飛びはなくなり、明るい側のトーンがつながるが、シャドウ部は結構つらい。もちろんわざとこれだけ厳しい状況を作っているのだからそうは良い点は取れないのだが、水平色分解のセンサをもつデジタルカメラは2/3絞り程の余裕は持てるし、シャドウ部にももう少し余裕はある。垂直色分解方式のもっとも大きな問題点だといえるでしょう。
総論
オールマイティなカメラではないが、大光量を確保、ライトコントロールが可能であり、しかもモアレしやすい高周波成分を多く含んだ被写体(衣料やメッシュを持った製品、コントラストの強い小さなロゴマークを含んだ商品など)を多く撮影しなければならない場合、大いに威力を発揮するデジタルカメラだといえるでしょう。個人的には画像を生成するエンジンの仕様か、もともとレスポンスが非常に高いデータであるのに、さらにそれを強調しすぎる絵作りをしているように感じます。もう少し明暗や色彩に対してグラデーション重視の仕上げが出来るように進化したなら応用範囲が広がるような気がしました。鹿野 宏