株式会社セコニック C-500
 
 

フィルムが持つ特性は少々特別で、通常使用される工業用の相関色温度と異なります。従来のカラーメーターは、当然このフィルムの特性に合わせて、作られているため従来のカラーメーターによる補正値をデジタルカメラに適用しても、色温度が合わず、ホワイトバランスが取れない場合がほとんどでした。

デジタルカメラのイメージセンサーが持つ色温度の特性は工業用途の色温度計で使用されている相関色温度(黒体軌跡の相似して、ややマゼンタ、あるいはグリーン方向に偏差したもの)となります。そのため、今度は相関色温度を計測できる必要になってきたのです。

相関色温度のグラフ。

グラフの右がアンバー、左がブルーを指し、上下がグリーン/マゼンタの偏差となります。赤い線が黒対放射のグラフで、緑の線が相関色温度を指し、どれだけ元のグラフからはなれているかをΔUVで表します。

現在デジタルカメラの特性に合わせて作られた手に入れやすい価格のカラーメーターがC−500のみだと言って良いでしょう。色温度と、マゼンタ・グリーン方向の偏差値を私たちに見せてくれるので安心して使用できます。)マゼンタ・グリーン方向の偏差値に関してはCCフィルターの指数が採用されています。デジタルカメラのホワイトバランスをセッテイする項目内のM/Gの偏差に基準がまだ制定されていないので現在のところはかなりアバウトだと言って良いでしょう。
※C-500は1Mと出た場合、フィルターで言うとおよそ2.5Mにあたるが、デジタルカメラの場合は2.5ポイント下げる、というような一致はしないので注意しよう。プラスかマイナスかの方向性は示せるが、ディスプレイやカメラの目盛りの数とは一致しないのです。これを可能にするには、ディスプレイ・カメラメーカーも何かの基準に歩調を揃える必要があるでしょう。

注目したいのは、フィルム的な色温度ではなく視覚的な色温度を測れる、ということはストロボやタングステンライトだけでなく通常の環境光の色温度も測定できるということです。

これ迄、いくらキャリブレーションツールを使用してディスプレイをキャリブレーションしても、その結果を確認する手だてがありませんでした。また、ターゲットにするべき環境光の色温度を知ることができなかったため、「5000Kの蛍光灯を取り付けたら、ディスプレイは5000Kに設定する」というかなり強引、かつおおざっぱな方法論でディスプレイと環境光を一致させ、本当に環境光が正しく5000Kであるかどうかを知ることは不可能だった訳です。(信じるものは救われる、という方法論ですが、正確さを増すために、壁紙も、カーテンもグレイにしようと言っていました)

C-500を導入することで、自分のスタジオ、あるいは作業環境の色温度、照度を測定でき、そこに置かれているディスプレイのターゲット値を具体的に知ることができます(ディスプレイのターゲット値=環境光の色温度)。これは大きなことだと考えます。究極のカラマネツールはハードウエアーキャリブレーションディスプレイだと言われていますが、この場合であっても、そのターゲット値が適正でなかったら、絵に描いた餅になってしまうのです。

また、適切に色温度を測定し、キャリブレーションを行ったのにどうしても色彩がずれて見えることがあります。多くの場合は相関色温度としてのΔUV がずれているためで、これがマゼンタ、グリーンの偏向値なのです。そのためキャリブレーションをとった後にちょっとグリーンを上げ下げするだけで見事に色調が整うことがほとんどです。これは多くのキャリブレーターが相関色温度はターゲットに持っていても、マゼンタ・グリーンの偏向に関しては無関心だからでしょう。さらに、人間の目はマゼンタ・グリーン方向の差分を強く感じる傾向にあるせいがあるのかもしれません。

この機能のためだけにC-500を購入するのはもったいないと思うかもしれません。もう一つ注目したいことはモニター機能を使用することで手持ちのストロボの色温度をすべて5200K(あるいは任意の色温度)に設定してしまうことも楽にできるのです。デジタルカメラを使用してもできないことはありません(デジタルカメラ自身は高精度な測定装置として十分に使用できる)が、そのためにはかなりの手間がかかります。C-500を使用する場合はターゲットになる色温度を基準にすればすぐにどれだけのフィルターをストロボにつければ良いかがすぐに判断できるので自分のスタジオであれば灯体ごとの色をきちんと揃えて、レンタルスタジオを使用したている時などは、ありったけのストロボを用意してその中から近似値のヘッドを選択していくという方法を採れ、実に便利で素早いセッティングが可能になるでしょう。

ついでに言うとC-500は簡易照度計の機能も兼ね備えています。通常照度計は廉価なものでも3〜4万円はするので照度を計測したいと思っている方には無駄な投資を省けるというメリットもあります。

C−500は基本的に撮影のための機能を優先して設計されていますので、そのままカラーマネージメントシステムに組み込もうとすると上手く動作しないこともありますが、その辺りを十分に理解して使いこなしてみれば、素晴らしい補助機能を持っており、私もこのメーターを使ったおかげで理解できた多くの現象がありました。当初にあげたように現時点において100万円以下では唯一と言える「デジタルフォト的な相関色温度」を測定できる装置としてもっと多く活用されていい製品です。

レポート 鹿野 宏