AF-S Micro-NIKKOR 60mm F2.8G ED
 
 

新発売のAF-S Micro-NIKKOR 60mm F2.8G EDを1週間借りることができたので、早速テストしてみました。実写は少ないけどチャートは結構あります。このレンズも覗いた瞬間に「あ、ナノ・クリスタルコート」だなってすぐにわかる。でもさすがに105mmのときのような感動はない。感動はないけど、DXフォーマット(90mm)でもFXフォーマットでもかなり活躍を期待できそうな焦点距離で、60mmという選択にすごく納得できてしまう。買ってしまったら、きっと最も使用頻度が高いレンズになるのでしょう?


絞り変化

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まずF2.8からF32までひと絞りずつ絞りをかえて撮影してみました。もちろん被写体にはできるだけ均等に光が当たるように注意してます。
また、このチャートは中心部の明るさが均一になるように現像しているのでどのチャートも中心部の明るさはほとんど同じ。RGB24の並びです。 F2.8とF4では周辺光量の不足が如実に出ています。F5.6でだいぶ解消し、F8以上ではほとんど周辺部の落ち込みはありません。ただ、これはAPS-Cサイズのデジタルカメラにつけたとき(赤枠内部)にかなり解消されるようです。

絞り変化D2X

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D2Xに装着してみたところかなりいい結果がてました。F4でほとんど解消され、平均されてます。この周辺部の落ち込みがイメージセンサとの相性ならこのような傾向はみられないでしょう。

D3のチャート左1/4_f4

赤枠のすぐ外がちょうどAPS-Cサイズとなる。中央が240で赤枠のそばが223。約17ポイントの落ち込みだ。最外周は186まで落ち込んでいる。(むろんこれはビネットコントロールで修正可能だ)

D2Xのチャート左1/4_f4

APS-Cサイズで撮影されたチャートの中心部が241。最外周が223で約18ポイントの落ち込みでほぼD3のチャートと一致する。故にこの落ち込みはレンズ解放のせいで、ミラーボックスやセンサー周辺部であるための落ち込みではないことがわかった。

D3のチャート左1/4_f11.0

ところでこの周辺の落ち込みだが、D3で計測してみたが、何処まで絞っても7ポイント以上の差が縮むことはなかった。35mmカメラ用レンズの制約上中央部と周辺部では、この程度のものが残るものなおかしら?

各絞り値中央部

中央部分の拡大キャプチャーです。 F4から、F11まで見事に解像しています。F2.8とF16はやや落ちますが私には許容範囲に感じます。F22以上は回析の影響がはっきりと出だします。

各絞り値周辺部(左上の端)

周辺部(左上の端)のチャート。実に端正です。解放側では周辺の光量が低下しますが、真円はほとんど維持しています。全体の画像を見てもそうですが、どの直線もほとんど歪んでいません。ただF8がほとんど周辺校両不足を起こしていないのが確認できます。

各絞り値周辺部(左上の中央)

左端中央でもF8だけが中心と同じ明るさを保っています。他の絞り値はなにがしかの明るさ低下を起こしているようです。実はこれは右の橋では、それほど起きていないので、お借りしたレンズの個体の特性かもしれません。

F8で撮影したチャート全体

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F8の画像の全体をじっくりと観察すると、左下がやや暗い感じはしますが実にすばらしいできです。最高性能はF5.6〜F8といえそうです。


イメージセンサの埃

運良く?イメージセンサーに埃がついていたので、ローパスフィルタ上の埃が絞り値によってどのくらい変化するかを見ることができました。60mmあると、解放からF5.6までは誇りがあってもほとんど気がつきません。F8で、プレーンな場所なら気がつきます。F11でははっきり確認できて、F16以上は芯が見えてきます。そうなるとF5.6がバランス的に最高?

1ピクセル等倍チャートの「部分」マイクロニッコール60m

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左側が参照用のもとのチャート。右が今回撮影した60mmマイクロレンズの撮影結果です。当然、1ピクセルの線をピクセルのセンサーが寸部のずれも無くとらえることは物理精度でいってほとんどあり得ないはずなのですが…。
見事に1ピクセルの縦横の直線を解像しています。筆者はこんなチャートは初めて見ました。この1ピクセルを解像するなんて、思ってもいませんでした。安心なことに?市松模様は解像をあきらめて見事にグレイ、あるいは彩度、明度を落として色相変化は小さい色べたとして記録しています。斜めの線はヘアーラインのようですが、何となく感覚があります。驚くことに同心円は確かに…完璧ではありませんが…同心円として見ることができる状態で記録されているのです。

1ピクセル等倍チャートの「部分」50mmF1.8とマイクロニッコール60mm

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で、ついでに以前にNikon D3で撮影しておいた50mmF1.8のピクセルチャートと比較してみました。本来、イメージセンサーの能力、癖をチェクするためのチャートですが、レンズの質によってこれだけの違いも出てくるのだと実感します。50mmF1.8の「解像しかけたように見える」というだけでも十分に驚いているのに。D3の画像を解釈するエンジンの質が非常に高くなり、演算ミスが少なくなり、ついにここまできてしまったのだ、という感慨があります。いや、本当に、これが解像するようになるとは思ってもいなかった。このレンズ、ニコン製品の中でもトップクラスの性能を持っていたんですけど…

一ピクセルチャートピクセルずらし

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さらに意地が悪い、一ピクセルをほんの少しずつずらしたチャート。同じ幅なのだが、はまったによっては、解像したりしなかったり…。撮影時のほんの少しの位置ずれが、どのような影響を及ぼすかを見るためのもの.これで見ると、このチャートは実に見事に撮影されてしまった、ということが何となく想像できる。ちょっと残念。

放射チャート

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普通、ここでは周辺部の細かいところで何か破綻を起こすのだが、これも見事。画素補完の演算が実に素晴らしいレベルで行われていることの証明だ。

4ピクセルチャートの解像

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4ピクセル部分。これだけのピクセルが当てられると、ほとんどもとの姿そのままに撮影できる。これはどんなカメラも同じ。上にちょっと見えているのが2ピクセルの部分。これを参照しながら、左の元画像と比較すると、高周波成分が多い画像に対してはもっとも小さな形に最低でも3〜4ピクセルが当てられる必要があることがわかる。

1ピクセルの小さな色面

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1ピクセルの小さな色面は、周辺の色彩にほとんど引っ張られてしまう現実がよくわかるだろう。ベイヤー配列の最大の欠点だが、この場合、無理に色を出そうとせず、グレイに上手に逃げているのがわかるだろう。

銀の船(模型)

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今回の唯一の作例写真。銀製の船の模型を黒バックで撮影。どう見てもかなりきつい状況だが、輝度差に大きな落差がある部分も実に見事に仕上げている。銀の質感や汚れのリアリティもものすごいものがある。


結論

60mmという焦点距離にしてはVRがついていないのにも関わらず、大振りのレンズだ。また、いくら近接撮影をしても全長が変化しないのはありがたいことだが、前玉が引っ込んでいないのも、なじめない。わざわざ、フードをつけなくてはならないのがやだ。いや、全長が変化しないのは確かにいいことだが、それなら等倍にこだわる必要もなかったのではないか?現実には0.7倍程度の拡大率があれば十分なシーンが(特に60mでは)ほとんどだと私は思う…。反対意見はこんなものだろうか?それ以外はなんと見事な描写をするレンズだろう!というのがあたしの感想。物撮り、モデル撮り、お料理、風景….何でも撮影できるぞ!。特に35mmから105mまでの焦点距離はズームは一本でいいから後は単玉でそろえたいものだ。持っているだけで、本当に嬉しくなるレンズで、APS-Cサイズで使用する時の90mmという焦点距離も気に入った。きっと買うんだろうな…。