2019年 5月 定例勉強会レポート
「超高感度撮影&ナイトタイムラプス撮影テクニック」
2019年5月4日の電塾は10連休の最中にも関わらず、30名近くが参加されて開催されました。
ナイトネイチャーカメラマンの竹本宗一郎氏をお迎えして、「普通のカメラマンは体験することが不可能な超高感度撮影」はじめ、高感度画質が向上したことで夜景や星空をドラマチックに表現する「ナイトタイムラプス撮影テクニック」をご講演いただき、仕事で暗所撮影やタイムラプスの機会がある方々には見逃せない会となりました。
竹本氏のセミナーは用意周到!。レジュメと動画を二台のコンピュータに分散させ、スイッチャーで切り替えて進行するという見事なもので、見ていて「隙」がありません。また、本題の超高感度やノイズリダクションなどより、「ロケの柔軟性を保ちつつ、可能な限りリスクを抑える努力」とそのための「情報収集力」に感服しました。お話の中のテクニックや機材の話題もとても重要でしたが、何よりも「仕事を完遂する姿勢」に心から敬服しました。
…とはいえ、内容にご興味はあるでしょうから少々かいつまんでレポートいたします。
1:高感度適性の高いカメラが必要
当然です。ですが、私が考えている高感度とはちょっと次元が異なっていたようです。
私は普段ISO感度6400で撮影できるかどうかをカメラを選択する際の基準と考えているのですが、竹本氏は「ISO感度80000で映像品質を担保できるもの」が欲しいそうです。しかもノイズリダクションは自分でやるからカメラには余計なことをしないで欲しいとも。普通に買えるカメラとしてΑ7sII、LUMIXS1、GH5sの3機種を挙げていましたが、竹本氏が「本気で撮影する超高感度動画撮影には特殊なカメラを多用している」ということでした。
2:増感、ノイズリダクションのテクニック
実際に撮りっぱなしの画像と、竹本氏によるノイズリダクションの差を見せていただきました。超高感度の動画撮影はもちろんシャッタースピードを下げることもできませんし、F1.8より明るいレンズはあまりありません。そうなると感度を上げるしかないのですが、超高感度でもダイナミックレンジを6ステップほど確保し、ノイズも上手に抑え込み、まともに見える「絵」に仕上げる技術力に脱帽です。
3:明るい大口径レンズ
というわけで市販されている大口径、超広角レンズもご紹介いただきました。
金額はおよその価格です。明るく、超広角で開放で使えるレンズというと結局皆高価になってしまいますね。
- シグマ 14mmF1.8 17万円
- タムロン15-30mmF2.8 8-16万円
- ニコン AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 27万円
- オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 14万円
そして当たり外れはあるものの、竹本氏も愛用しているレンズとしてサムヤンも紹介されました。
- 14mmF2.8 ED IF ED UMC Asphericall 4万円
- XP14mmF2.4 10万円
- 12mm F2.8 AS NCS FISH-EYE 6万円
4:周辺機材
カメラだけでなくムービーやタイムラプスはしっかりした三脚が理想ですが、一度のロケに10本も持っていくそうです。そこで編み出したスリング、カラビナ、細引きロープ、ペグ、自在金具、ストーンバッグなどを使用して「軽い三脚を現地でしっかり固定する方法」はじめ、レンズウォーマーの正しい使い方から、ニープロテクターまで広範囲に紹介していただきました。
5:完成形のイメージ
ご存知GoogleEarthを使って目的に合致する地形を探すことから、現実にロケ地を決定するまでの過程を完成した映像とともに見せていただきました。利用できる情報ソースをフルに活用してしっかりした完成形をイメージすることが成功の秘訣だとも教えていただきました。
6:ムービーカメラとスチルカメラの使い分け
もともと動きのあるものはムービーカメラ。目視で捉えられないほどの動きを圧縮して可視化するのがタイムラプスで、その時はスチルカメラを選択するということでした。また、星系のムービーは長時間露光が可能なタイムラプスが適しているということです。
7:パッキング
これだけの機材(カメラ10台、レンズ凡そ20−30本、三脚10台、赤道儀いくつか、スライダーなど)を担いでロケを続けるためにどんなパッキングをしているのかお伺いすると「運びやすい」よりも現地で出し入れしやすいパッキングを目指しているということでした。オススメはペリカンなどのカメラバッグですが、米軍御用達の「SKB」というバッグも教えていただきました。結構安くて使えます! でかい、長い、というバリエーションもあり、今後選択肢に入れたいと思っています。(通販ではサウンドハウスが扱っています)
8:便利なアプリ
事前に必要な情報を得るために使用しているアプリも惜しげも無く教えていただきました。
Google earthはもちろんのこと、星の動きにステラナビゲーター、天気予報にGPV、Windyなど。
現地のチェックにはスマホ用のアプリを使用しているそうです。
- スマートステラ(iOSでは「i ステラ」がそれに当たるそうです。
- クリノメーター(角度を測るアプリ)
- ナイトスクリーン(スマホを暗く表示するため)
- 月相(月の満ち欠け、出と入り)
- フライトレーダー(邪魔なヒコーキの航路を事前に確認)
- マリントラフィック(同じく貨物船など)
- Windy(風の動きを知り、雲や雨の動きの予測に)
- SCW(天気予報)
講演の合間にも、予定よりも多くの作品を上映していただきました。素晴らしい作例の数々を拝見するだけでも、大きな充足感を味わえたことを追記しておきます。
おなじみの玄光社さんから竹本さんの著書が出ています。私は本屋に走りました!
竹本宗一郎さん(ナイトネイチャーカメラマン)のプロフィールをご紹介いたします。
映像制作会社ZERO CORPORATION代表。自然をフィールドにしたさまざまな映像を制作。特に特殊機材による微弱光下での撮影に精通し、CMや映画などの映像を手がけるナイトネイチャーカメラマンとしても知られ、各メーカーの先端技術開発におけるスーパーバイザーとしても活躍中。
電塾塾長 鹿野 宏