2014年 11月 定例勉強会レポート
午前の部 「VAIO Prototype Tablet PC」
ソニー…ではなくVAIO株式会社が満を持して放つ「VAIO Prototype Tablet PC」
今回のお披露目は「新製品発表会」ではなく極限まで製品版に近いβ機。今後の方向性を求めるために広く意見を聞きたいというスタンスだそうです。
本日はVAIO株式会社の伊藤好文様がご説明をして下さいました。
そのスペックは…
4コア/8スレッド対応の第4世代Core Hプロセッサ Core i7-4760HQ。
メモリーは最大16GB(試作機は4GB)
ビデオボードはオンボードだが、最上位のIris Pro Graphics
記憶装置はSSDでPCIe対応で900Mbpsをたたき出し最大2TBが視野に入る。(試作機は256GB)
ディスプレイはAdobeRGBほぼカバー
長辺2560pixelという広大な空間で使い易い4対3と言うフォーマット
ピクセルピッチは250dpi。ほぼ印刷と同等と考えていいだろう。
画素数で言うと436万画素。
応答性と高い精度のポインティング能力を持つタッチ液晶画面を搭載
メモリ食いのアプリケーションでなければ8時間ほど駆動するという。
それでいて重量は1キロちょい。
残念なことにOSは8.1。まあ、Windows8のために設計されたような部分もあるしね。
画像出力にはminiDisplayPortにHDMI
入出力にUSB3.02ポート1000BASE-Tの有線LAN(開閉式コネクタ)SDXC対応SDメモリーカードスロット(UHS-II)イン/アウトカメラ
スペックとしてはかなり乱暴な言い方だけどもMacBook Pro Retinaの廉価版に436万画素の出来のいいデジタイザスタイラスペンで絵を書けるディスプレイが付いていると言った感じです。
クリエイターを対象にした、「外に持ち出して使えるPC」を目指したということですが、確かに5千万画素程度の静止画を扱う分には十分な能力を持っています。画像処理も、書き出しも充分なスピードです。
内蔵スタンドの出来が秀逸でした。上から下に開く逆向きの構造で、スタンドの設置面積を広く取ることができ、平らな机上では安定しやすい。スタンドを手で押さえなくても自由な角度に調整ができ、画面を戻す際も片手で接地したままの状態を保てる。幾ら書いてもテキストでは良くわかんないね?実際に触ってみると驚きます!。ぜひチャンスを探して触ってみて下さい。
スタイラスペンの感度や精度もとても高く、これも「売り」のひとつ。
MacBook Pro Retinaの上位機種をメインマシンとしている身にはちょっと中途半端な印象を受け、「使い方、はまる場所」がぴんとこないのです。その最大の理由は個人的に「タブレット」である必要性が全く無い所為でしょう。そして動画の撮影や編集、2億画素、20億画素の超高精細画像を普段から使っている立場からは、CPU/ビデオボード関連のスペックが低いと感じてしまうのです。
でもちょっと視点を変えてみましょう。
スタジオ(仕事場)はタワー型のマシンを使用して、ロケや打合せに持っていくマシンをこれから選定する…あるいは買い増しを考えている…このマシンでは「巨大な画像をハンドリングしない」「ドロウ系のソフトを使う」ような場合は二重丸だと感じました。オンボードとは言え、Iris Pro GraphicsはAdobe Primiere Pro もサポートしています。そう、強力なタワー型マシンをメインとしている人間が「外に持ち出す高性能なタブレット」を欲しければ見事に「はまり」でしょう。
今回は「このマシンをどういう風に仕上げて欲しいのか?どういった用途に使いたいのか」と言う情報を集めるために行われたお披露目だと言うことですので、こちらからのリクエストを考えてみました。
インターフェイスがふんだんですが、あくまで「外で使用するタブレット」という位置づけの場合USBは一個あれば十分だと感じます。miniDisplayPortもそれほど魅力を感じません。それよりもHDMIの入力を追加したい…
元々は昨年末に電塾の本田氏が提案していたことですが…HDMI入力があればとんでもないマシンの登場になるのではないでしょうか?。HDMI入力のためのチップセットがどれだけ大変か分かりませんが…もしこれが可能なら、Ninja BladeもShogunもいらないのです。動画を撮影しながら10bit、422で記録し、そのまま編集!が可能になります。もしこれが可能なら、すぐさま「買い増し」で購入するでしょう!元来PCIeという今考え得る最高のデータ転送レートを持っているのです。入力された信号を高いビットレートでエンコードするアプリケーションはWindowsでも作れると思います。ちょっと調べてみましたが、世の中にHDMI入力をサポートするノートPCは存在しません。これが可能になれば、一気に動画の世界でも受け入れられこと絶対確実だと思うのですがいかがでしょうか? まあ、その場合「タブレットである必然性」はあまりないので、兄弟機種として考えていいのかもしれません。デザイナーやイラストレーター向け、カメラマン向け、動画向けの3兄弟。今あらインナップが完成したら楽しいですね!
レポート・鹿野 宏
第1部 Epson
午後の部の最初はエプソン販売会社 広報・宣伝部 泉 政之様 エプソン販売会社 CPMD部 大久保 雄輔様によるエプソンプロセレクションシリーズの新製品「SC−PX5VⅡ」
と8年ぶりの新製品になるスキャナーの「GT-X980」についてお話頂ました。
「SC−PX5VⅡ」の進化はユーザーから寄せられた改良点や要望に答えた新製品との事です。
では「SC−PX5VⅡ」では、どの様な進化を遂げたのか見てみましょう!
○新フォトブラックインクは顔料の色材配合を見直し黒の階調をより豊かにした「Epson UltraChrome K3インク」を搭載。
○新マットブラックインキにおいてもマット紙の表面付近に定着しやすくなり、にじみが少なく重量感ある黒の再現が可能。
○シャドー部の黒の領域が広がったため、カラーでも立体的になり階調も広くなっています。
○樹脂層の部分が厚くなり乱反射を抑える事が可能になった。
○本体のフレームの剛性を高める事で、着弾率の精度を高め高精細、高画質を再現。
そして、使い勝手の進化として。
○2.7型チルト式タッチパネルを搭載。
○新アプリケーション「Epson Print Layout」と「Epson ColorBase2」をリリース。
○有線•無線LAN搭載しており、Wi-Fi Directに対応しスマートデバイスから簡単プリント。
○インクの見直しにより、他社製のアート紙などにも幅広く対応。
「SC−PX5VⅡ」と「PX5V」の比較のプリント見本を見たのですが、確かに「Epson UltraChrome K3インク」で階調の領域が広がった事がわかります。
「PX5V」のプリントも素晴らしく美しいので、ぱっと見た感じでは両者のプリントの差の違いは解りずらいのですが、シャドーの階調性を見比べる
とやはり「SC−PX5VⅡ」に軍配が上がります。シャドウ部の階領域が広がった分微妙なトーンが再現されているのです。
「Epson UltraChrome K3インク」で階調域が広がるなら、古い機種でも「Epson UltraChrome K3インク」を使ってみたいと思うのは私だけでしょうか?
今までの機種でシャドー部分に不満が有る方がいらっしゃいましたら、一度「SC−PX5VⅡ」の見本プリントを見てみる価値は有るかも知れません。
また、興味深いソフトがリリースしており、まずは「Epson Print Layout」このソフトはPhotoshopやLightroomのプラグインになっており、
それらの、ソフトでレタッチが前提なのですが、モノクロプリントやソフトプルーフのプレビューが可能で一枚の用紙に複数の画像の割り付けができるのです。
用紙設定やプリント設定が一目で解りミスプリントが無くなり「SC−PX5VⅡ」の再現能力を最大限活かしたプリントが簡単に作れてしまうのです。
もちろん、他社の用紙でも簡単設定で利用が可能です。また、プリンターの機種が限られますが昔の機種でも「Epson Print Layout」は使用可能との事です。
そして「Epson ColorBase2」となり、テストチャートを印刷してわずか1回だけ測色機でチャート測定を実施すると、それに基づくプロファイルデータで
全ての純正用紙を標準的な色再現に近づけてくれるのです。もう用紙毎の測色はしなくても良いのです。
しかも、保存されるプロファイルデータはプリンター側に保存されるため、複数台のPCでプリントしても標準的な色再現を可能にするのです。
測色機にカラーモンキーが加わった事も嬉しいお知らせでした。
私自身、プリンタープロファィルを作るのに、各用紙で2000パッチのテストチャートを測色しますがこの作業は手間が掛かり過ぎ…。
「SC−PX5VⅡ」を購入して恩恵を預かりたいものです。
Wi-Fi Directに対応したり、時代の流れと共にプリンターも進化しています。上手く活用して行きたいですね!
そして、8年ぶりの新製品になるスキャナーの「GT-X980」の進化です。
新設計のフィルムホルダーはアンチニュートンリングアクリル版を用いり、Filmの厚さとフォーカス深度の調整を行うためピント位置調整機能は興味深いでね。
注意が必要なのは、新設計のフィルムホルダーを昔の機種で使用しても、新設計のフィルムホルダーの性能は出ないとの事でした。
また、ウォームアップ無しでスキャンが出来るLED光源も進化しています。待ち時間無しで生産性の向上が計られます。
8×10のFilmもスキャン出来るのも嬉しい限りです。
エプソン2014秋の新製品では多くの機種で使い勝っての向上が計られており、スマートデバイスからでも簡単プリントのコンパクトプリンターも有ります。
ご興味のある方は一度カタログに目通して頂けると、「これだ!」と思う製品に出会う事が出来るかも知れません。
そして、エプソン様より質疑応答で精査を要する、3項目に対してのお答え頂きました。
「Epson Print Layout」について
Q:Lightroomからプラグイン(Epson Print Layout)にデータを書き出してレイアウトするのか?
A:その通りです。データ形式はTIFF、カラースペースはAdobeRGBで書き出されます。なお、詳細は操作画面(添付ファイル)をご覧ください。
「GT-X980」のLED光源について
Q:GT-X980について、光源としてLEDが2本搭載されているようだが、その寿命は?
A:申し訳ございませんが、開示できるデータがございません。
ただし、LED光源ですので通常使用においては本体寿命よりも長くお使いいただけますのでご安心ください。
「Epson ColorBase2」について
Q:プロファイルの測色機がColorMunki対応となっているが、古いのはどこまで使えるのか?
Q:i1Proもふたつあるが、古いのは使えるのか?
A:当社が動作確認している測色機は以下の5モデルのみとなります。
i1Pro(UVカットフィルターあり)のみ
i1Pro2
i1Io(UVカットフィルターあり)のみ
i1iSis
ColorMunki
早々のご対応いただき、ありがとうございました。
レポート:電塾運営委員 北 英樹
第2部 Panasonic株式会社 LX100/GM5
パナソニック株式会社
AVCネットワーク社イメージングネットワーク事業部 和田学明様
イメージングネットワーク事業部コンシューマービジネスユニット商品企画グループ勝浦宏典様
LX100
LX100は35ミリ換算24-75mm、F1.7〜F2.8と言う沈胴式の出来のいいレンズを持ったマイクロフォーサーズシステムのカメラ。レンズ交換はできないが、その代わりボディに組み込むことで思い切った設計、最適化を可能にした。コンシューマ機の最上位という位置づけだが私にとっては、ロケ、取材のメイン機になってしまいそうです
レンズ交換式として供給されている同じ35ミリ換算24-75mmF2.8よりも1と1/3絞りほど広角側が明るい。これは「マクロフォーサーズ機の宿命であるセンサーピッチの小ささによる高感度性能の限界」を一段以上もカバーしてくれる大きな特徴です。広角側は絞りを開いてもそれほど被写界深度が浅くならないので、このズームであれば理に適っていると思います。いや、ズームレンズでF1.7から始まる物ってあまり記憶にないんです。
絞りリングはレンズ周辺に、シャッタースピードは軍幹部のダイアルに。これは懐かしい、と言うよりもやはり「使い易い配置」だったんだなと再認識。シャッターダイアルは1秒から1/4000秒までしかないが、1/3、2/3はコマンドダイアルを使用する。これ以上の低速シャッターと高速シャッターは電子シャッターに切り替わる仕様になっているのは見事だと感じた。絞りリングをレンズ周りにつける発想はレンズ一体型だからできたこと…交換レンズでは難しいよね…値段が上がっちゃう。ちなみにボデイ側の切り替えは記録フォーマット。これを行うために1600万画素を1200万画素として扱っている…4:3の時にはフルで使う選択肢も残して欲しかった…。
各ダイアルにAUTOポジションが阿あるためシャッター優先や絞り優先、と言ったモードは搭載されない。これもすっきりしていい感じ。露出補正ダイアルもいいけど、個人的にはISO感度ダイアルとそのAuto位置があれば完璧だった。何しろ最近は「絞りとシャッタースピードを固定」してISOAutoで撮影することが増えているので…。最近のカメラはISO50から3200の6段くらいはスナップなら問題ないんだもの。
ファインダーはGX-7と同等品。なかなか見やすいファインダーです。
イメージセンサと画像処理エンジン、静止画用の空間認識オートフォーカス、−4EVまでのAF動作、使い易いカスタムマルチAF、人物撮影時に必須の「瞳・顔認識」などは評判のよいGH4と同じものを搭載している。私にとってはもう必須になってしまった「ハイライトシャドウ調整機能」が搭載されているのもありがたい。しかも絵作りはGH4とほとんど同等。但しこのスペックは静止画に対してで、動画はだいぶん見劣りがするしビットレートも低めの設定。まあ、このサイズでは仕方が無いんだろうが音声入力インターフェイスも省かれていたのがとても残念。動画はあくまで「4K撮れますよ」レベルでした。
つかえそうな「4K フォトモード」
実は4Kから静止画の切り出しは60pを実現させてからのことだと考えていました。最大の理由は4K程大きな画像では動体は「ぎりぎりまでぶらさないと自然に見えない」という現実。つまり「できるだけ遅いシャッタースピードで撮影しなければならない」のです。そうなると写真の場合はぶれていないことが良い写真の条件。相反するので4Kからの静止画の切り出しは「掟破り」と考えていたのです。
でもPanasonicは異なる考えで「800万画素の静止画を秒30コマの中から切り出すこと」を実現してきました。そうです。最初から「動画としては使わない」「4K切り出しのためだけに動画を撮影する」ことで、ハイスピードでの撮影を許容し、何とアスペクト比を選択可能、Exif情報を記録可と言うとても美味しい使い方を掲示してきました。これでロケハンで4Kで撮影してもExif情報を得ることができるのです。これは嬉しい!
どうせなら4Kフォトのモードは可能な限り高速シャッターを切らせてしまう設定にしてもいいのでは?と思う。さらに贅沢言うとALL-Iで200Mbps以上は欲しい。4KフォトモードはA3プリントOKと言うけどこれは条件がよければ。普通に考えるとA4がベスト。見本に回って来たA3のプリントは「これじゃダメじゃん」という惨憺たる物でした。ちなみにGH4の場合はバージョンアップでループ記録も可能だそうです。これ、いいですね!
これでサイズが小さく( GM5よりもほんの少し大きい程度)400グラム。
12−35mmレンズが305グラムだから…それよりも100グラム重いだけ。これは3台のカメラを持つ気になる時にとても重要。
起動の遅さを差し引いても普段使いにベストだと感じましたが、防滴性能があればもっと幸せだったと思います。やはり外で撮影するのだから…花形フードが欲しい。広角コンバージョンレンズと望遠コンバージョンレンズがオプションであればさらに幸せ!いや、広角系の0.8倍コンバージョンは必須だろう!と思う。
その場合約19ミリから60ミリという超広角よりの標準ズームになるんだもの!設計は難しそうだけど大いに期待します!
三脚穴と電池室が近すぎて、三脚に乗せた状態や、プレートをつけると電池もカードも入れ替えることができない仕様は頂けない。できればグリップのサイドから入れるような設計はできなかったのだろうか?普通は「いや、このカメラは首からぶら下げて使うカメラだから」と言われるかもしれないけど、4K撮れるカメラなんですよね??
私なりのまとめ。このカメラでスタジオ内の商品撮影、モデル撮影はまずしない。スタジオで大量の商品、モデルを撮影するのならニコンを選択するし、超高精細画像をリクエストされればハッセルブラッドを選択するだろう。ほとんど人間の目に見えない暗いシーンの撮影をリクエストされればα-7sを選択するだろう。
でも、カメラボディを2台から3台肩に掛けてそれぞれに超広角ズーム、明るい標準ズーム、明るい望遠ズームをつけて動き回りたい時、私はニコンやキヤノンの中、上位機種を選択しない。中核にLX100を据えて、望遠側をGH4で固める。絵作りのエンジンは同一なので併用しても全く問題ない。ロケ、動画、スナップ、イベント、舞台撮影であれば静音モードも相まってとても強力な「私のかけがえのない助っ人」になってくれるだろう。動画をリクエストされた時も全く同じ。4Kと言われても対応できるのが強み。写りはいいのだから急に「これ物撮りして!」っていわれても大量に撮影するのでなければ全く問題ない。この小ささと軽さ、F値の明るさ、バランスの良い焦点距離は普段使いのカメラとしても活躍してくれると思う。
元々スナップと風景をメインにしていたカメラマンにとって使う場所を限ってしまえばこれほど使い安く、シーンにマッチしたカメラは今のところ思いつかない。
GM5
このカメラとLX100を同時発売する気持ちが理解できないけど…実はGM1が発表された時「このカメラからストロボを外していいからファインダーをつけてくれ!そうしたら絶対買う!」って言っていたのですが…実際にその仕様にしてくれました!これは買わないと!と思ったのですが個人的にはどうしてもLX100の方に気が行ってしまいます。
ま、よくこれだけ小さいボディに詰め込んだ物です。ストロボは本体もそうですがコンデンサーがかなり大きいので何とかなったのでしょう。
同時に発売された35-100のズームレンズはかなり小さく、軽い。とても魅力的なレンズです。山田氏などは「LX1001台と、35-100を取り付けたGM5の二台持ち」を提案していました。
第3部 セコニック C-750
株式会社セコニック 露出計営業部 国内営業グループ 吉澤隆史様
株式会社セコニック 開発技術部 光応用開発課 深澤康様
光の成分、特に色(波長)の情報を得るためには3色フィルタータイプと分光タイプの測定方法が存在しその中でも精度が高いと言われているのが分光タイプ。分光光度計のシステムはプリズムを使って光を波長毎に切り分け、その量を数値化することを可能とする物で、従来はその測定に「光電子倍増管」が広く採用されてきた。もっとも最近はプリズムではなくグレーティングが一般的になってきたようですし、光電子管はリニアセンサーにに変わってきているそうです。グレーティングとはCDの表面のような筋に反射させて分光すること…でもこれには弱点があり、カメラマンが計りたいフラッシュ光には対応できていなかった。
分光光度計というと工業製品として販売されている物が多く、高価な物では200万円、安くても70〜80万円で、大概写真専用対応などしていないことが多いのです。また多くはコンピュータに接続して使用する物で「単体で使用でき、高い精度」を出せる物は少ない。我々に身近なところでキャリブレーションに使用されている「i1 Photo」や「CollarMonkey」などが分光光度計だが、ドライブするためにはコンピュータ、OS,アプリケーションが必要になります。特に前述のフラッシュ光は測定できない(現在手に入るものではC-700以外では不可能)し、LEDやHMIに至ってはその大もとの波長があまりにピーキーであるために高価な分光個時計を以てしてもろくに測定できない状態でした。(数値は出てくるけど実際の見た目とは異なっている)大手のLEDメーカーは独自の補正式にその数値を代入して結果を得ていたのです。
7~8年前にカメラの開発技術者たちと懇談している時に「今のデジタルカメラはそれ自身が高度な測定器みたいな物だから」というようなお話しに「うんうん」とうなずいて納得していたことを思い出しました。CMOSに白く記録されたらそれは白。赤っぽく記録されたらそれは赤に偏向しているのです。
そうです。デジタルフォト専用の測定器なら、測定部に蓄積型CMOSセンサを使ってしまえばいいことなのです。ここに注目したセコニックさんは偉い!この場合CMOSに反映された情報をそのまま使用すればよく、わざわざ光源によってドライブを掛ける必要もありません。
光学系もよく考えられており、球形の受光面からファイバーロッドで導かれた光は熱線吸収ガラスを経て赤外成分を除去され(CMOSは紫外線に対して元々感度がないのでそのまま)必要に応じてNDフィルタで光を減衰させ、コリメートレンズで平行光線に変換、Linear Variable Filterで分光(ハンドヘルド機のため、制動が難しいプリズムではなく、バリアブルフィルターで分光)された光を蓄積型CMOSで測定する…と言う可動部分を極力排除して設計されています。でも光量の大きなストロボなどを計るための「NDフィルター」や、わざわざ蓋をしなければならない「ブラックキャリブレーション」のための「仕掛け」も内蔵にしたところはやはり「日本の機械」らしい仕上がりです。※(セコニックさんはダーク補正と呼んでいます)
こうして誕生したのがこれまでの「カラーフィルタ分光タイプに比較して精度が格段に高く」「フラッシュ光やLEDなど光源を選ばず」「5ルクスから20万ルクスまでの幅広い明るさを測定可能」「手許で色温度、色偏差の数値、分光グラフ、演色指数、フィルター補正値、ホワイトバランス補正値を大きな液晶画面で表示」してくれる「スペクトロマスター C-700」です。ちなみに銀塩フィルムに換算するモードも持っています。(どうやら今回はデジタルで正解を出して、それを補正して銀塩対応に変換しているように見受けられます。時代…と言うことでしょう。)※フラッシュ光の測定範囲はF2.8〜45.0(20lx・s〜5,120lx・s)
筆者にとっては、LEDを測定できるかできないかが大きな問題でした。世の中に充満している「輝度だけは稼ぐけれどもどんどん発色と明るさが変化(劣化)していく劣悪なLED」を光源にして撮影しなければならない大変さ…LEDと太陽光、LEDと電球という最悪の組み合わせで撮影しなければならない時、そこを解決できるフィルターを指示してくれること、最悪の場合は分光グラフをクライアントに見せて納得してもらう…これが可能になったのです!。
測定ピッチは約4nmピッチ。(出力は演算で1nmを表示)定評のあるコニカミノルタの「CM-3700A」が10nmであることを考えるとかなり細かい。(買おうと思ったことがないので、定価がよく分からないけどたしか200万円クラス)
光源を99個までメモリーできるので、複数の光源を測定してバランスを取る、あるいは一固体の経年変化を観測することが可能です。また、同時に4個までの計測データを表示できるので、通常のライティングでは必要充分。スタジオなどでストロボヘッドやHMIを借りる時、これでバランスがとれた物だけをセレクトすることもできます。
また、ディスプレイの白色点を測定可能なのは大きな進化ですね。環境光とどのくらい偏差があるのか測定できます。さらに照度も測定可能になりました…折角だから、ビューファインダーにアダプターを装着して輝度も測定できるようになると、ディスプレイキャリブレーションの強力なツールになると思うのですがいかがでしょう?つまり、反射光で照らされている白い紙と自己発光しているディスプレイの明るさを「輝度」と言う単位で測定できれば、活躍する場は大きく広がること請け合いです。
動画の撮影にも大きな助っ人として活躍するはずです。写真は後からかなり部分的な色補正も可能になりましたが、動画の場合はまだまだです。撮影時に現場で使用する照明器具のキーライトに対する全ての偏差を測定し、そのまま続行するか、あるいはフィルターでバランスを取り直すべきかを事前に判断できるのです。これで多様な環境できちんとホワイトバランスを取ることが可能になりました。
ちなみに、測定器の校正は1年毎を推奨しているそうです。 電塾運営委員 鹿野 宏
第4部 RICOH THETA
リコーイメージング株式会社 広報宣伝グループ 川内 拓様より動画も録れる「RICOH THETA」についてのご説明です。
全天球(360°)イメージを1ショットで撮影できる「RICOH THETA」をモデルチェンジして動画も撮影出来る「RICOH THETA」(型番 RICOH THETA m15)発売しました。なお初代「RICOH THETA」との併売はしないとの事。
今回のモデルチェンジで進化した所は
○動画に対応
○Wi-Fiの高速化、従来の速度の2倍の速度を実現
○ボディーカラーは4色でホワイト、ピンク、イエロー、ブルー(初代はホワイトのみ)
○API/SDKを公開して「RICOH THETA」のオリジナルアプリを個人でも作製可能
360°動画の完成までの流れとして「RICOH THETA」で動画撮影→PCで専用ソフトで合成→スマートフォン等で専用ビューアで360°の動画を楽しむ!
グルグル回して、皆さんで画像を共有して楽しく使って頂きたいとの事です。
撮影をしたイメージは、専用ウェブサイト「theta360.com」にアップして、FacebookやTwitter、TumblrなどのSNSなどで共有する事が出来るのです。
初代「RICOH THETA」を発売以来、専用アプリも使い勝手が良くなる様、幾度も更新されております。
「RICOH THETA」は4GBの内蔵メモリーとなっておりメモリーは交換出来ないとの事でした。また、無理矢理分解すると絶対元通りにはならないとのお話も有りました。お気をつけ下さい!
4GBのメモリーが内蔵なので、1回の撮影時間は3分で動画が13ファイル撮影可能との事。
解像度は1280×720pixel フレームレート15fpsになるそうです。
電源は内蔵バッテリーにマイクロUSBで充電となります。
動画の作例では本体のカラーがわずかながら映り込んでしまっています。ボディーカラーの黒も販売して欲しいですね。
いずれにしても、あの覚える事が難解な360°の静止画や動画を気軽に撮影出来るカメラの性能アップは嬉しい事ですね。
レポート:電塾運営委員 北 英樹
第5部 LYTRO
解説 山田久美夫 運営委員
撮影後に自由にピント位置を変えたり被写界深度を変えられるゆにーくなカメラが、国内で正式発売されることになった。
加賀ハイテック社が発売、大手量販店で販売される。
4000万画素のセンサーだが得られる画像は400万画素。
独自のRAWファイル形式で記録、カメラ本体や専用アプリで再生可能。
専用アプリでマウスやタッチで指定した部分へのピント送りが出来る。
また、シュミレートによる絞り操作で被写界深度調整が出来る。
30-250mm相当でF2固定の8倍ズーム搭載。ISO80-3200。
静止画の他、3Dや効果を連続的に変化させたアニメ的な動画作成も可能。
ピント位置や被写界深度が変えられる画像が撮れるという他のカメラでは真似できないこのカメラ、使いこなすには従来の撮影の常識を覆す発想や技術が必要かもしれません。
URL:https://www.lytro.com/
レポート:電塾本部運営委員 柳川 勤