2012年 10月 定例勉強会レポート
10月の定例勉強会にご参加ありがとうございました!朝10時20分から夜7時半までの長丁場でしたが、無事に終了させることが出来ました。今回は50名入る会場でしたが殆ど満席、今一番気になる!「定常光を中心とした照明機材大会」では日本国内で手に入れることが出来る殆どのLED照明機材が所狭しと並べられた光景は実に壮観でした。プレゼンターはもちろん、運営委員で、照明にかけてはオーソリティの玉内 公一です。
さらに「フォトキナで発表された今年の新製品」。今回も自費でフォトキナまで出かけてレポートしてきました山田久美夫氏です。
午前の部
■午前の部は「優しい電塾」です。初心者のための「間違いなく始める Lightroom入門」今回は
01_ファインダーとLightroomの関係
Lightroomの高速化のティップス
効率的なバックアップ
Lightroomから元データへのアクセス方法。
02_ショートカットで自由自在
Lightroomを高速化するショートカット
ライブラリ編
現像編
03_現像のティップス…モノクロ編(近日公開予定)
ハイライトを入れる
シャドウを入れる。時には黒レベルを切り込む
テーマを浮き立たせる覆い焼きと焼き込み
モノクロなのに色相彩度??
明瞭度は質感をコントロールする。
以上の3項目をハンズオンで行いました。それぞれタイトルをクリックすると別ページ(動画+ポイント紹介)が表示されます。
第2部 定常光を中心とした照明機材大会 前半
■「高演色性LEDモジュールについて」
XICATO Japan 株式会社 代表取締役 事業開発本部長 海東 登氏
アメリカのXICATO社は、世界4大ハイパワーLEDメーカーのひとつとして知られるルミレッズ社からスピンアウトした3名が幹部として2007年に立ち上げたベンチャーの光源メーカーです。カリフォルニアはシリコンバレーのサンノゼに本社があります。(ちなみに発音は「シカト」というのが近いようです。)
LEDそのものを生産している訳ではなく、LEDは仕入れてモジュールとして完成させ光源として開発・提供する会社です。
同社のポリシーとしては、現在使われているランプと比較して性能的に「光の質」において何ら妥協することなく、クオリティーにこだわるユーザーにLED光源を供給する、ということが掲げられています。
LEDの特徴として省エネ、長寿命という利点ばかりが知られていますが、手軽に手に入れられる反面、半導体であるLEDを使いこなすにはいくつかの技術的な難題があると海東さんは語ります。
具体的には発光特性のバラつき。微小点光源なので照明とするには複数のLEDを使用しますが、各LEDのホットスポットが引き起こすマルチシャドウによる品質の低下。その他、発熱(光に熱は含まれないが、本体には発生する。)が引き起こす発光効率の低下や寿命の劣化、急激な技術の進歩による性能の格差など様々な問題を、 ビン(ランク付け)として分類されたものの使い回しを考慮することや、高度な計算や設計により克服する必要がでてきます。
その中でもXICATO社のXMSスポット・モジュールは、蛍光体の熱への影響を低減させる改良型コールド・フォスファー・テクノロジー(蛍光体を浮かせてLEDから離して熱伝導を逃がす技術。)や、様々なバラつきのあるLEDをチャンバーという空間でデータに基づき意図的に光を混ぜ合わせる高度な技術などを 駆使することにより、安定したムラのない輝度と色度を、温度、寿命とともに達成しているということです。
http://www.xicato.com/jap/index.php
レポート: 染瀬直人
■Litpanel社のLED機材を見る 株式会社メディア・ガーデン 技術部 次長 田中淳二氏
続いてアメリカ・ロスアンゼルスに本社があるLitepanels社の日本の正規代理店である株式会社メディア・ガーデンの田中氏から、LEDライトのラインナップについてご紹介いただきました。
映画の街として知られるLAに本拠地があるLitepanels社は、映画の撮影用に使用出来るLEDライトの開発に注力してきました。その中で、今一番普及しているのが「1×1」。1フィート四方の正方形のライトです。
「1×1 バイカラー」は球が2種類用意され、5600°Kから3200°Kの範囲に色温度を変更出来ます。従って、朝から夜まで、屋外から室内へと撮影環境が変わってもスムーズに対応が出来るのです。
一方、同じかたちをした「1×1 バイフォーカス」は、照射角度の違う2種類の球をクロスさせることによって、照射範囲を変えていくことが出来ます。球はフラッドとスポット、スーパースポット、タングステンタイプのフラッドと4種類用意されています。
そして、今年になって登場して来たのがフレネルタイプです。レンズがついており、”絞り”と”バラし”が出来ます。照射角度は15°〜5°。
小さいタイプの「SolaENG」はビデオカメラやDSLRの上に載せて使うことが可能で、ハロゲンに換算すると250w相当の明るさを実現しています。
更に大きいものではデイライトタイプが「SOLA4」、「SOLA6」。タングステンタイプが「INCA4」、「INCA6」というネーミングになっています。数字はレンズの口径を現しており、4インチと6インチが用意されています。
これらは発熱が殆どなく、火傷の心配もないといいます。駆動はPCで、コンパクトなバッテリーを電源として使用出来、 また調光も0〜100%で可能です。
最後に、デイライトタイプのみのタイプですが、575wと最も明るく高出力なHILIO。そして、16.5cm×10.8cm×3.9cmとコンパクトで、ACの他、単三電池6本で発光。抑えのライトとしても利用出来、熱が出ないという利点がある、フリッカーフリー機能搭載のCROMAが紹介されました。こちらも2種類の球が内蔵されており、3200°K〜5600°Kの間の色温度に設定が出来ます。また ディフューザーが入れられます。
横浜にスタジオがあるメディア・ガーデンでは購入の他に、一日¥3,000〜¥6,000程度でレンタルも行っています。
http://www.media-garden.co.jp/
レポート;染瀬直人
■オーロラライトバンク社 LED最新機材 (オーロラライトバンクジャパン)
プレゼンター 玉内公一(運営委員)
デジカメから仕事をはじめた私。仕事の内容にもよるが、モデリングランプによる陰影も参考にせず撮った画像をモニターで確認しながら光を作っていくのが私のやり方だ。それでも、窓から注がれる太陽の光を気持ちいいと思ったり、木漏れ日の光に優しさを感じたりと、光の流れを視ながらライティングすることは、自分にとっても理想だと思う。それでも、光をイメージしながらストロボ一発でその光を作れた時は、定常光には味わえない爽快感だと自負している。これは危険か?! ぼちぼち動画の撮影もすることになり、現場で問題となっているのが音と光だ。今回、そんな自分の悩みを一つ解決すべく、この「定常光を中心とした照明機材大会」は、外せない一日となった。
韓国テグ市に製造拠点を持つオーロラライトバンク社は、世界40カ国以上の輸出実績を持ち、KBS(韓国放送公社)との共同開発したLEDライトを作るなど、信頼性も抜群である。
玉内さんにこの会社の照明機材のポイントを聞いてみた。
「オーロラライトバンク、強いて言えば少々金額が安いことかな? 今回会場に集合した照明、そんなに差はない。どこもDMXコントロール機能が搭載されてるし、来年になればもっと良いものができるでしょう。まだまだLED照明は期待できる。」
オーロラライトバンク製品は、輸入代理店でなく、ジャパンが設立されているのでサポートも万全だろう。
他社との差を見つけるにはストロボ選びもそうだが、やはり機材を触ってみて使いやすいものを選ぶしかないようだ。斯く言う私も、LED照明機材を触ったのが今回はじめてでした……(汗)
株式会社auroraライトバンクジャパン
レポート:菊池斉
■KPIが販売するユニークなLED最新機材 デドライト社 フローライト社ほか
プレゼンター 玉内公一(運営委員)
この時間に注目したのが、デドライト社のミニDLOBML(価格68,250円)。ホットシューにも付けられるような小型ライトなのだが、抜群の配光特性と玉内さん絶賛! アクセサリーも豊富で、ソニーやパナソニックのバッテリーだけではなく乾電池も使用可能。高出力でありながら8ワットと省電力で、アダプターを介せば外部バッテリー端子があるビデオカメラからの供給も可能!
お店で見つけたら是非手に取っていただきたい商品の一つ。
株式会社ケンコープロフェッショナルイメージング
http://www.kenko-pi.co.jp/brands/dedolight/
レポート:菊池斉
第2部 定常光を中心とした照明機材大会 後半
(株)サンテック 「LEDパネルライト」
田村 正明氏
LEDライトがどういう構造になっているのか、どういった特性があるのか、今回の「定常光特集」での話を聞くまで実のところ良く理解できていなかったのです。田村氏の解説は大変解り易くLEDの概要がよく理解できました。
光源に使用しているLEDは「白色LED」と言われるもので、「青色発光ダイオード」に黄色の蛍光物質を被せて作った物。この「青色発光ダイオード」は昨年11月に特許が解禁となり、正式に製造、販売ができるようになったばかりなのです。
LEDにはパワーLEDと砲弾型LEDというものがあり、前者は製品にした場合、光量はあるがワット当たり3000円位。砲弾型の場合は105円位と30分の1の価格に。パワーLEDは熱を発するが、砲弾型はほとんど熱が出ない。
サンテックの製品は砲弾型LEDを使用し、価格は他社よりも3分の1位に設定してあるそうです。
LEDライトの明るさは2年前ではおよそワットあたり68ルーメン。現在はなんと170ルーメン!蛍光灯は100ルーメン。今や、LEDは非常に効率の良い照明になっているのです。
同社の大型LEDライトCNシリーズ 例えば 「900HS」; LED数:900個 明るさ:700ルクス/m 本体価格95000円 AC100V~240VとVマウントが使用可 無段階調光(ディマー)コントローラー付き 日本仕様の雄ダボ付きなので直接スタンドに取り付け可 他にもアクセサリーが充実しておりかなり使い易そう。
LEDチップはほとんどが台湾製。これを中国で組み立てています。実はこの組み立て品質があまり良くなく、サンテック独自のこだわりですべてハンダ付けをやり直しているそうです。長寿命であるはずのLEDが時々切れてしまうことがありますが、それは単にハンダ付けの不良に過ぎないという笑えない事実が多くあるそうです。
色に関しても最近の物は実用上問題の無い演色性能を保持しており、昨年までのLEDチップとは大きく品質が向上しているということです。
他にも小型軽量の携帯LEDライトのシリーズもあり、明るさ、色温度も良好。価格も15000〜30000円と入手しやすい製品が3種類あります。
海外のメーカーから多くのLED製品が販売されている中、サンテックの”すべてのハンダ付けをやり直す”という“Made in Japan化”と徹底した低価格への追求に、サンテックのLED普及への意気込みを大きく感じました。
レポート、写真 運営委員 柳川 勤
アガイ商事(株) 「LEDがついたバッテリーストロボとブライトキャスト社LED」
吉田 雄一氏
アガイ商事はスチールカメラマン系でいうならブロンカラー、映像系でいえばブロングループのコボルトのHMIを扱っている販売代理店です。
デジタル時代になり、昨今のカメラの感度上昇に伴い、光源に大きなワット数がいらないということになり、LEDは避けて通れない照明アイテムということで「ブライトキャスト」というLEDメーカーを扱うことになりました。
今日持って来た機材は、アガイ商事がメインで扱う”ブロンの色のこだわり”と同様のポリシーを持ち、こちら側(販売側=ユーザー側)の意見を直接取り入れて開発してもらえること、製品の品質のブレが無い「ブライトキャスト」の製品です。
PCモニタと同じ横長タイプの24インチと16インチ角正方形タイプの2種類のパネルライトがあります。どちらのタイプも色温度(3200K〜5600K)が自由に調整できる「バイカラー」があります。24インチには5600K固定の「デイライト単色」もあります。
光源のLEDは直進性の高い点光源のため30度の角度に拡散させるレンズがLEDの先端に着けてあるものを使用しています。
要望があれば性能を確認してもらうために機材のデモの要請や貸し出しに応じたり、池袋の本社内のスタジオでも自由にテスト出来ます。
最近、ハンディなカメラでの小型のLEDライトの要望が増えており、それに応えるのが30Wの小型LEDライト。カメラのホットシューに付けられ、ライト本体にシューが付いているのでマイクも付けられます。電源はSONYのハンディカム用12Vのバッテリーを使用し120分〜180分可能。フラット光とスポット光の切替え可能。調光可能。付属のフィルターで3200Kと5600Kの色温度切替え可能。とかなり優秀なライトです。
「ブライトキャスト」のLEDライトは安定した色温度や高水準の演色性を保つためあえて3200K〜5600Kにこだわった調整をしており、多灯ライティングでも安心して使えそうです。付属品にリモコンがついておりこれで調光や色温度のコントロールが出来ます。本体の背面には操作パネルがあり調光や色温度の確認が出来ます。
ブロンカラーのバッテリーストロボ「モービルA2L」と「モビLED」
「モービルA2L」は従来の鉛バッテリーよりも軽くて高効率なリチウムバッテリー。フル出力1200Wで220回の発光回数。
「モビLDE」はモデリングライトが30WのLED。動画用には定常光としての照明が可能。単体で別売りアダプタを装着すれば直接AC電源が使えます。
これらの組合せで写真にも動画撮影にも使える、ロケ用のライトです。
実はブロン社もLEDの開発をしていたがLEDがあまりにも不安定なので開発から手を引いてしまった。しかし、バッテリーストロボ用のモデリングランプはバッテリーを長持ちさせる為にLEDを採用しました。ただし、メーカーとして正直、あまり言いたくないがLED素子のレベルはブライトキャストに比べるとあまり良くないです。ストロボがメインの機材なので、緊急用に動画撮影に対応できると考えた方が良さそうです。
アガイ商事の吉田さんのかなりホンネの入った機材の紹介は大変好感の持てるものでした。
レポート、写真 運営委員 柳川 勤
おまけとまとめ
運営委員 玉内 公一
LEDの原理。
PN接合で構成された半導体で電流を流すと光が出る。色はLEDチップに入れる化合物(ガリウム、窒素、アルミニウム、リンなど)によって変ってくる。白色光は2色以上の光を混ぜて白色に見せるシングルチップ方式とマルチチップ方式がある。方式によってどんな色でも出せる高演色性の物もあるのですが価格が実用的ではありません。
LEDは売れれば安くなります。今、色んな所に使われているLEDが開発された40年位前には一個のサンプル価格が1000円位していた。それが発売当初には一個500円、その後あっという間にバケツ一杯50円!になった。売れれば量産効果で安くなります。一般家庭用の照明としてのLEDは今後それなりに普及し安くなっていくと思われますが、写真用のLEDがはたしてどれだけの需要があるのか、これはメーカーからしてみればほんの僅かな数でしかない。とういことを頭に入れておいて欲しいです。
色温度と演色性について。
色温度というのは簡単に言うと青い光と赤い光のグラフ上の傾きを見ているだけ。だから色温度が同じで発色が違うというのはいくらでもある。カラーメーターというと旧ミノルタの物がありましたが、このメーターはフィルムをベースにした色温度を測る、相対的色温度というより写真的色温度を測る物でした。これは自然光、タングステン光、ストロボ光などでは問題無いのですが、ピークを持った波長の光、例えば蛍光灯や白色LED光を測ると全然違う値を示します。
セコニックにC-500というメーターがありますが、これはデジタルカメラのセンサー特性が似ている人の目の分光特性に基づいた設計になっており、今までのカラーメーターが苦手としていた蛍光灯やHMIの色温度を測れるようになりました。このメーターにはデジタルモードとフィルムモードのどちらも測れるようになっておりデジタルモードでで測るとデジタルカメラに合った色温度を出してくれます。しかし、残念ながら白色LEDに対しては色温度の値はムチャクチャになってしまう場合があることを覚えておいて下さい。
演色性とは。
太陽光と比較してみた時に色の見え方を表現する言葉。
RaとかR1といった演色評価数で評価するが数値ではなく、実際に目で見た色とデジカメに写った色の違いを意識することが大事。
中国製の安価でネット通販で購入できるLEDライトもありますが、色温度や演色性を理解していれば使えるものもあります。タングステン変換フィルタで「626番」というLED専用のフィルタをLEEフィルタが近々に日本でも発売予定です。
レポート、写真 運営委員 柳川 勤
第3部 山田久美夫のフォトキナレポート
(ただ今執筆中)
今月の一枚
数社との折衝、これだけのLED照明機材を一同にまとめてくれた玉内さん!ありがとうございました!
分光光度計を使ってスペクトルを測定する「お宅」たち