■これまでの履歴■

<第18回定例セミナー> 2009.2.28

   
早川廣行氏(電塾塾長)
阿部充夫氏(電塾本部運営委員)
橋本勝氏(株式会社NTTデータ)
  
 
   
  レポート1  藤山武


2009年最初の東北電塾定例セミナーは、電塾本部から、早川塾長・
本部運営委員 阿部ハードウェア部長とともに、(株)NTTデータ 橋本勝博士、
(株)コスモ・コンピューティング 太田悟史先生にお越し頂き、最新技術について
ボリューム満点のセミナーとなりました。

第1部は電塾 早川塾長より
「フォトグラファーから見たAdobe Photoshop CS4の本当の実力」と題して、
はじめに、PAGE2009 の中のセミナーとして開催された勉強会では、
近年ますます進化を遂げている、デジタルサイネージについての
「電塾的デジタルサイネージのススメ」の模様を紹介いただいた。
今後ますます普及、一般化していくであろうデジタルサイネージの実態・・興味深い情報でした。

次いで、写真の基本中の基本からデジタルについておさらいいただきました。
そんな複雑化していくデジタル写真、電画。しかし基本は同じ写真、光画である。
写真は階調表現技術である。
階調補正を前提にした撮影の基本は16bit処理。
8bitでは加工を加えればどんどん階調表現はくずれていく。
ホワイトバランスは撮影時に正しく設定、画像処理で行うグレーバランス調整と
混同しやすい、ホワイトバランス。
しっかり撮影時に照明光源の色温度をカメラに設定することは重要である。

RawモードとJpegモードについて
Rawはプリント前のネガ同様のデータ、Jpegはポジフィルム同様のデータ。
階調補正に対応できるデータどうかの違い、この違いが大きいのだがそれ以外は画像品質に
大きな違いがあるわけではない。
デジタル撮影重要となること「撮影後に必要な最小限の階調補正」
特別な意図がない限り、無彩色は無彩色で表現するのが鉄則。
マクベスのカラーチャートを撮影時に撮影するのはこのためである。
1.トーンカーブでグレーバランスを整える
   カラーサンプラーと情報パレットを有効利用し整える。
   このときにカラーチャートの無彩色を無彩色にする。
   トーンカーブでグリーンチャンネルにR、Bチャンネルを合わせていく。
2.トーンカーブで階調を整える
   明るさ、コントラストを微調整
3.色相・彩度で色の偏りを補正
   大幅な補正はダメ!プラスマイナス5度以内に収まれば色のズレはきにならない。
基本をお復習いしたところで、いよいよ「Adobe Photoshop CS4」の紹介です。
その1:新機能
その2:フォトグラファーから見たAdobe Photoshop CS4の本当の実力
その1:新機能
CS3の機能のブラッシュアップはもちろん、
・色調補正パネル・マスクパネル・コンテンツに応じて拡大縮小・被写界深度の拡大
・スムーズなパンとズーム、ペイント・Lightroom2との連携
などなど、演算処理の方式を変えたり機能の強化が多く行われている。
時間の関係で詳細は説明がなかったが、塾長が執筆したハンドブックが
http://www.genkosha.com/pscs4/
よりPDFでダウンロードできる。
その2:フォトグラファーから見たAdobe Photoshop CS4の本当の実力
CS3は「アドビ史上最大のリリース」と謳われCS4は「最高傑作へのショートカット」と謳われている。
その本当の実力は。
1.大幅な作業効率の向上と仕上がり精度の向上
2.グラフィックス統合ソフトとしての完成度の高さ
3.AdobeとしてLightroom2に次ぐ2番目に64bitOS対応
4.グラフィックボード上のGPUを利用したOpenGL2機能による
   画像表示関係の速度が圧倒的に高速化した。
5.自動選択演算機能の向上による精度の高さが実現した自動処理能力はPhotoshop史上、
  最大の作業効率向上に寄与している。
6.色調補正パネルとマスクパネルが調整レイヤーのマスク編集技術をビギナーにも解説

などなど、Photoshop CS4もCS3の登場以上に驚きの機能を紹介いただいた。
Windowsを評価する早川塾長は、ホント目からウロコだよ!という表情でした。
ハードもソフトも最新の物を用いる事の有意性、重要性をまた認識いたしました。
 

 
   
     
       
 
レポート2

マルチバンド撮影の最新情報と実機による撮影デモンストレーション
第2部は、最新技術・最先端技術である、マルチバンド撮影の最新情報を東北電塾で
実演紹介していただきました。

はじめに電塾本部運営委員 ハードウェア部部長の阿部充夫氏より、
これまでのフイルム、RGBのデジタルカメラの色再現性についての説明があった。
フイルムの頃は今程、色域の意識がなく撮影した物全て見えている色全てが撮影できると思っていた。
しかく阿部氏に寄せられる相談には感じにくい色についての相談やどうしても再現できない
ぺぺーミントグリーン等の色の事であった。
また、紫外線、赤外線の影響やそれをカットするフィルタ、現在の1眼レフカメラには
必須で装着されているIRカットの影響など、阿部氏がこれまで取り組んできたそれらの色の問題を
事例と共に紹介してくださった。
その長年試行錯誤と対策をしてきた色再現の解決策が、
マルチバンド撮影、シックスバンド撮影だったということである。
しかもマルチバンド撮影は光源の情報も記録することにより、しっかりとした数値として情報を
記録することができ、また高精細での記録となれば緻密な筆のタッチや染料、
塗料の状態を見ることができる。
様々な面でこれまでのデジタル写真を大きく飛躍させる撮影技術である事を
これまでの実証データと共に説明していただいた。


続いて、株式会社 NTTデータ橋本勝博士と株式会社コスモ・コンピューティング太田悟史先生より、
『究極の色再現を求めて』と題した内容に移った。

『虹の色は何色ですか?』という質問からスタート。
物理的な色として380nmから780nmの可視光線をいかに表現するか…。
それは光源(照明)とセンサーに大きく依存される。

そこで!マルチバンド撮影技術。
マルチバンド撮影とは、センサーには通常3色(R・G・B)のフィルターがあり、
3色で撮影されるが、そのRGBの幅を細分化して記録する事により、より細やかな色情報が記録される。
マルチバンド撮影の4つのメリット。

1.正確な色再現性
RGBのみの3バンド撮影にくらべ、はるかに高い精度で色の再現性を持っている。
精度を表す数値の望ましいとされる数値とほぼ同等の数値をえられる。

2.広い色域
通常のRGBセンサーで撮影できる色域基準に考えて、その色域をほぼ内包するのがAdobeRGB。
そしてそのAdbeRGBを内包しながらも広い色域をもつのがマルチバンド撮影の色域である。

3.スペクトル情報の推定
マルチバンド撮影では、照明光のスペクトル情報とマルチバンド撮影した情報から、
照明光に依存されない、物質固有の色(スペクトル反射率)を推定することができる。
スペクトル情報の推定が可能ということは、絵画などの古美術品の塗料や材質を その情報から
特定が可能になったり、退色している絵画からオリジナルの色を復元することも可能となる。
例えば色あせた文化財などの襖絵などが、仕立てられたころの色を取り戻した状態を
復元できるのである。 文化財保存などの分野でも有能な技術であり、そしてなにより
医療の分野でも非常に有力な技術なのである。

4.撮影時とは異なる照明下での色がシミュレーション可能
3のスペクトル情報の推定が可能であることから、撮影時とは異なる照明下での色の見え方も
シミュレーションが可能となる。太陽光のスペクトル情報を加味した見え方、白熱灯での見え方など、
照明光に影響を受けない情報があるからこそ、その照明光の影響を反映させて見ることもできるのである。

4つのメリットを紹介いただいたところで、実際に撮影のデモンストレーションを頂きました。
事前の準備としてカメラの感度計測、撮影照明光の計測、モニタのキャリブレーション、
そして肝となるレンズへのマルチバンド撮影用の特殊なフィルターをセット。
事前の準備はセミナー以前、前日から橋本博士に行っていただいており、デモは撮影からスタート。

今回は身近なデジタル一眼レフカメラをテストモデルとして使用してのデモ。
(もちろんカメラには特殊な加工や細工はなし、通常のデジタル一眼レフカメラ)
撮影はマルチバンド撮影のフィルタを付けない通常の撮影、次いでフィルタを付けた状態で撮影。
これで撮影は完了。
通常の撮影で得られるデータはもちろん通常のデータ。
それにフィルタを付けて撮影した特殊なデータをマルチバンド色再現ソフトウェアを使用し
演算することによりマルチバンド撮影情報が生まれるのである。

被写体は、ピーコックグリーンや色の鮮やかなブルー・橙のクロスと、
とても鮮やかなサッカーのユニホーム。
どの被写体も通常では再現が難しかったり、色飽和が起きてしまうような色。

撮影の結果は真っ赤なユニフォームはみごと色の飽和もなく、しっかりとした階調を
もって再現され、再現の難しい色は遜色なく再現されている。
まさに新世代のデジタル写真!

まだまだマルチバンド撮影したデータを完全に再現できるモニタが無いのが残念だが、
色域の広さと再現の正確性にこれからのデジタル写真の光明を見ることができた。
着々と進行形で進化を続けているマルチバンド撮影技術。
デモンストレーションでもわかるように現段階では既存のデジタルカメラでも利用可能である。
デジタル1眼レフカメラの中級機以上であればほぼ同等の色再現が可能だそうだ。
しかし、デジタル1眼レフカメラには外せない赤外カットフィルタが今の所はネックとなる。
デジタルバックなどの赤外カットフィルタが外せるモデルであれば、デジタル一眼レフカメラよりも
更に精度の高い情報を生成することができるようになる。
そして照明光も基本的には既存の物を利用が可能である。
ただし、輝線が少なく全波長域にエネルギーがある光源が望ましい。
ストロボよりはキセノンランプやブルーランプ等が望ましく、最も望ましいのはデモでも使用している
人工太陽照明灯である。
そして撮影後のデータを確認する部分、これまでも電塾では常にその重要性を話されており、
当たり前であるがキャリブレーションモニタが必要となる。
ミドルクラスのキャリブレーションモニタ以上であればOK!
一般的な被写体のほとんどはsRGBの色域内に収まるが、やはりAdobeRGB以上の色域を持っている
モニタが好ましい事は言う迄もありません。

新たな技術、新たな色再現の世界・・・
さらなるデジタル技術発展を目の当たりにし、好奇心に胸が躍ったのは私だけでは無いはずです。
     
 
 
 

 

 

 

 

 

 
 
     
 
写真 青木真人