第41回九州電塾セミナーレポート

九州電塾10-11

11月27日
11月27日2010年41回目の九州電塾最終講義は早川塾長に締めの講義をお願いしました。
まず東京電塾での来週のお話から。後1週間後には全国大会が初めて泊まり込みで行われます。もう受付は占めきりましたが、後2〜3人は大丈夫かもしれないので、興味ある方は連絡してみてくださいという事でした。
今回の話題は、高精細画像処理実践編として撮影からPS5による処理の方法です。
高精細画像がなぜ必要なのか、仕事としては。

  • 文化財の高精細記録はこれからの仕事としてのびていく写真の仕事になる。
  • 文化財は経時変化により劣化していく。
  • 保存修復はきれいにはなるが、その時代を経た美しさが失われる。
  • 経時変化を経た時間の美しさを残すためには写真での保存が求められる。

撮影機材について


カメラはビューカメラを使用しレンズを動かさずバック部を動かす事がタイリングの場合重要です。デジタルバックはベイヤー配列での偽色を出さない為にマルチショットタイプのデジタルバックが必要になります。今現在で使用できるのは、ハッセルとジナーのデジタルバックしかありません、両機種とも数百万円しますのでおいそれとは購入できませんがこれしかないのが現状です。またマルチショットを実現する為にはシャッターの自動チャージが必要なのでシャッターも自動シャッターが必要になってきます。塾長はトヨビュー5×7にハッセルデジタルバックの組み合わせで撮影されていました。このほうがバック部の移動量が大きくなるからです。
撮影はビューカメラで4×5以上の面積をタイリングで撮影していく事から始まります多いときは20面以上のタイリングを行い、さらにカメラを移動してつなげていくという非常に根気のいる撮影が求められるという事でした。










作業をする上での環境を考える

  • MacかWinか
    • WinではCS4以上、MacではCS5以上の64bit環境が必要(システムも64bitカーネルに対応しておかなくてはならない)
    • 大きいデータを扱うのでできるだけメモリーを積んでおく

結論として


コストパフォーマンスを考えたときMacに比べてWinの方が勝っている、しかしそれ以外の部分においてMacは優れている部分がある。
という事でした、ではそれ以外の部分はなにか、それは自動整列での精度です。これは実際塾長がバーミヤンで行われた撮影画像をもとに検証結果を見せてもらいましたが、Winの場合少しずれているのもがMacのCS5の場合はほとんど修正が必要ないぐらい、あっていました。しかし演算時間は多くかかっていました。今回塾長のテストはMacProではなく、MacBookProでの検証ですので実際は早い可能性がありますが、これについては後日MacProの導入後という事でした。
作業での操作
 まず読み込みですが、これはすべての画像を開いて1枚にレイヤーとして重ねていくのではなく、必ずファイル・スクリプトから読み込んでレイヤーとして取り込むという事を行わないと、Photoshopのメモリーを無駄に食ってしまうので動作が遅くなったり、作業できなくなったりします。
 読み込まれたレイヤーを自動整列でタイリングを行っていきます。
もしくはブリッジから自動整列を選んでも同じように作業できます。
 それから作業ですが、Winを使用されている方は当たり前の事ですが、Macの場合はCS5から可能になった、アプリケーションフレームを使用したデスクトップ環境の方が作業がしやすいという事でした、これは僕も今まではあまり使用していなかったのですが、実際にアプリケーションフレームを使用すると画像範囲外に作業領域が広がり、タイリングなどの作業は非常にやりやすくなりました。


また自動処理でレイヤーした後にレイヤー階層を入れ替える事で面付け作業がやりやすくなります。
 精度の向上の為には描画モード・差の絶対値で確認を行い重なりを確実に行っていく事が重要です。そして作業を手早くに行う為には描画モードの変更をキーボードショートカットに当てて進めていくのが効率アップにつながります。
 レーヤーを読み込み重なりの精度を確認したらここでいったん保存を行うことも重要です。パノラマ処理を行った後に問題が起こっても、ここに戻れれば時間が節約できるからです。
 次が自動合成です。Photomergeを使用すれば一気にできるかもしれませんがそれでは細かい調整ができないのと間違っていたときにまた最初からやり直しになるので一つ一つ行っていきましょう。
 自動合成の素晴らしいところは、僕たちが合成を行うとどうしても境界線はぼかしを入れて合成を行いますが、 Photoshopに任せるとハードエッジでマスクを調整してくれ、コントラストや色調製も行ってくれるところです。
 これが終わったらここでレイヤーのままもう一度保存し、最後にレイヤーの画像を統合で1枚の画像に仕上げて完成ですが、ここでもう一手間、これもCS5の新機能パペットワープを使用して、レンズ収差やゆがみ補正を行うのがいいそうです。僕はフィルターのレンズ補正で直していましたが、これだと細かい微調節には向かないのでパペットワープを使用して最終画像を仕上げたほうが奇麗だそうです。


あともう一つこの画像をZoomifyを使用してWEBに公開すれば、処理速度の遅いPCでもWEBブラウザがあれば確認でき、世界中の人が共有できる画像ができ上がるという事でした。
 実際できた画像は拡大を重ねていくと壁面一杯を写した画像から、細部のディティールが見て取れるところまで近づけるのは、Google Earthで自分の家を世界地図から見るのを想像していただければ分かりやすいかなと思います。そのくらい迫力があり精密な画像です。研究者の方には涙を流す方もいたそうです。
 ここで今回の講義は終了です。次に質問コーナを設けたのですが、今回皆さんから色々な質問があり、大変充実した時間になったのではないでしょうか。


今回の講義で今年の九州電塾は最後になります。今年は出張電塾やハンズオンセミナー等色々やりましたが、皆さんいかがでしたか。
 来年の講義内容はまだ決まっていませんが、12月には、お知らせします。
来年1月皆さんよろしくお願いいたします。




写真   河口清秀
レポート  河口清秀